ROTKの字幕について

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『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕については研究熱心な方々がたくさんいらっしゃいますので、深入りする気はありませんが、個人的にひっかかったところだけさくっとあげておきます。尚、参照したトランスクリプトはこちら。左Main Menuの"Film Fun&Facts"のプルダンメニューから"Scripts"を選んでください。

○"If I should return, think better of me, farther"
 (字幕「万一生きて帰ったら、迎え入れてください」)
 デネソールとファラミアの会話でファラミアのせりふ。
 原作ではデネソールがオスギリアス奪還を命じた後にファラミアが言うせりふなので、「しかし、万一わたしが戻ってまいることがありましたら、わたくしめをご嘉納いただけましょうか!」(『新版 指輪物語8 王の帰還上』文庫版P179)と公な上下関係の文脈で語られていますが、映画では"farther"と呼びかけている通り、私的な親子の会話になっています。日本語で「見直してください」というと、功名心あふれている感じになってしまうし、良い訳が見当たらないのですが、「迎え入れてください」だとやや先走りという気もして、印象はいまひとつ。まあ、父親に伝えたい気持ちはファラミアの表情をみれば一目瞭然ですけどね(涙)。


○"Where does my allegiance lie, if not here?"
 (字幕「ゴンドールのためなら」)
 出陣前にガンダルフに「死に急ぐな」と言われて、ファラミアが応えるせりふ。
 直訳では、「ここでなければどこに私の忠誠があるというのです?」という感じですが、その前にデネソールが"Fealty with love, valor with honor, disloyalty with vengeance.”( 忠誠には愛を、武勇には敬意を、不忠には復讐をもって報いよう)と呼応していると思ったので、字幕だとそこがちょっとぼけるような気がしました。


○"I do not doubt his heart, only the reach of his arm."
 (字幕「身体の大きさを心配している」)
 メリーに武具を調達してやるエオウィンに水をさすエオメルの会話ですが、「勇気を疑っているのではない、彼の腕が届く範囲を心配しているだけだ。」というユーモアあふれるせりふが字幕だと伝わりにくいような。


○"Have you learned nothing of the stubbornness of Dwarves?"
 (字幕「ドワーフはあきらめない」)
 死者の道に赴くアラゴルンについて行こうとするギムリを「今回はダメだ」と諭すアラゴルンに対して、馬を引いて現れるレゴラスのせりふ。
直訳すると「君はドワーフの頑固さについて何も学んでないのか?」。「ドワーフの強情さを忘れたのか?」って感じでこれまたとっても笑えるせりふなんですけどねえ。


○"Lord Aragorn!"
 (字幕「アラゴルンの殿」)
 lordが訳しにくいのはわかるんですが、地名や家名ならともかく、名前に「の」をつけて殿って呼ぶとなんだか変と思うのはわたしだけでしょうか?


○"I do not fear death!"
 (字幕「死者など恐れぬぞ」)
 馬にも見捨てられたアラゴルンが、死者の道に入って行く時の決意表明ですが、「死者」の意味では他では"the dead"が使われているので、ここは素直に「死を恐れぬ」なんじゃないかと思ったんですが。


○"My Lady!"
 (字幕「エオウィン姫?」)
 セオデン王に連れて行ってもらえなかったメリーを馬にひっぱりあげて乗せてくれた騎士に対して、メリーが言う台詞。うーん、どーして「姫!」だけじゃいかんのでしょう。


○"Are you going to leave me?"
 (字幕「僕を葬るの?」)
 自分を見つけてくれたピピンに対してメリーが言うせりふですが、「僕を置いて行くの? お別れなの?」という感じに取っていたので、ちょっと訳文の直接さにぎょっとしたんですが。


○"If Sauron had the Ring, we would know it."
 (字幕「指輪はサウロンの手にはまだ?」)
 ペレンノール野の戦いの後、ガンダルフたちと会議をしている際のアラゴルンのせりふですが、「もしサウロンの手に指輪が渡ればそれとわかるはずだ」→「まだサウロンの手には落ちていない」、というアラゴルンの確たるせりふがなんで疑問文になってしまうのかちょっと謎。


○"We set out to save the Shire, Sam, and it has been saved. But not for me."
 (字幕「僕らは故郷を救うために旅に出て、故郷は救われたが、僕は旅立たねばならない。」)
 「僕のために救われたのではない。僕は救われなかった。」という意味があって始めて、旅立つことでのフロドの救済の意味が明確になるのではないかと思うのですが、字幕だと一足飛びでちょっと違和感がありました。


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