accent

WORDS

英語のせりふの中で気になった表現、字幕だとわかりにくい表現をあげてみました。
(あくまで個人的な解釈ですが)


◇Bootstrap Bill
◇leverage
◇Savvy?
◇Sticks and Stones
◇commandeer
◇"Not possible" vs "Not probable"
◇It must be terrible for you...
◇Couldn't resist, mate
◇square
◇It's right here, between you and Jack.
◇deserve
◇Shiver Me Timber
◇That was it
◇back to the nooseimageup
 「靴ひものビル」と訳されていますが、ブーツストラップは正確には靴ひもではなく、ブーツを履く時にひっぱる摘み革で、後ろに付いているものみたいです。「ストラップ(strap)」は携帯ストラップを思い出すとイメージしやすいのでは。
 ウィルがウィリアムを縮めたものと予想できるのと違い、ビルがウィリアムの愛称というのは、ちょっとわかりにくいですね。似たようなわかりずらい愛称としては、DickがRichard、Ted がEdward、LizがElizabethなんてのもあって、ほんと知らないとわからないです。
 てこの作用、力。
 字幕ではそれぞれ違う訳がついていますが、英語では3場面で同じ単語が使われていて、つながっているんだな〜、と楽しめます。

(1)ウィルがジャックを牢から逃がす時、「梃子の原理を応用してちょっと力を加えれば格子がはずれる」という場面。
"With the right leverage and a proper application of strength, the door will lift free."

(2)トルトゥーガで、ジャックがギブスにブラックパール号を取り戻す算段を話しているところで、「”隠し玉”があるんだ」という画面。
" Let's just say it's a matter of leverage, aye? "

(3)バルボッサがエリザベスを使って呪いを解く儀式をしようとしている場面で、ウィルがジャックをオールでなぐって気絶させて「君の”道具”にはならない」と言う場面。
"Sorry, Jack , I’m not going to be your leverage."
 ジャックの口癖で「おわかりかね?」という感じで、ウィルと二人でドーントレス号を乗っ取る時の"Son, I'm Jack Sapprow. Savvy?"をはじめ、何度もでてきます。  「実際的な知識、手腕のある」というくだけた形容詞として現在でも使われていますが、語源はスペイン語の「sabe(知る)」という単語らしいです。
 ジャックがエリザベスを盾に自分の所有物を返してもらい、それを彼女の手を借りて身に付ける所で、エリザベスの軽蔑の言葉に対して、ジャックが応じるせりふ。(字幕では「なんとでもどうぞ」。)
 省略されているフレーズは
 "Sticks and stones may break my bones, but words can never hurt me."(棒や石なら骨が折れるが、口でなんと言われても痛くもかゆくもない。)
 子供の喧嘩の文句だそうな。
 ジャックが船を奪うことを業界用語ではこう言うんだ、という単語。
 綴りをみれば一目瞭然、command(命令する)から派生していて、軍用に徴発する、という意味です。軍隊が民間人にやることを、海賊が軍隊に対してぱくっているという感じでおかしいですね。
 ちなみに「業界用語」と訳されているのは、nautical term(航海用語)です。
 エリザベスと一緒に孤島に置き去りにされたはずのジャックが「死の島」の洞窟に姿を現したときに、バルボッサが「不可能だ」と言うと、ジャックが「何ごとも可能だ」と応じる場面。
 possibleとprobableの違いは、英文法のお勉強でよく出てきますが、日本語で「可能性がある」というとどれくらいの確率があるのか、割と曖昧な感じがしますが、英語では確率によって単語が違うわけです。
 ceratainはほぼ確実で、probableの方がpossibleより確率が高い。possibleは「可能である、可能性がある」と言っても、そうなるかどうかについてはニュートラル。たとえば、probableの確率を75%とすると、possibleの確率は50%。それが否定形になると、not probableは25%、not possibleは0%ということになります。
 というわけで、バルボッサの「Not possible(不可能だ)」に対して、ジャックの「Not probable(可能性は低いが不可能ではない)」となるわけです。字幕の「何ごとも可能だ」はこの場面において名訳だと思います。
 孤島の夜、かがり火の横に座り込んだジャックとエリザベスの会話で、字幕で「この島で日干しは辛いでしょうね」と出るシーンですが、原文と直訳は、
"Jack, it mus be really terrible for you to be trapped on this island."
(ジャック、この島に捕われるなんてあなたにとって本当につらいでしょうね。)
という感じで、その前のジャックの「ブラックパール号が象徴するのは自由だ」という台詞を受けて、エリザベスがジャックにシンパシーを表現するせりふです。だからこそ、後でラムを燃やされたジャックが「あんなこと言ってたのに、今のあいつは何だ!」とこのせりふを引き合いに出してギャップを表すわけです。
 字幕だと、エリザベスは自分の身の心配をしているように感じられるので、ジャックに対する感情のニュアンスはわかりにくい感じ。(逆にノベライゼーションでは地の文で過剰な程に語られていますが(^^;。)
 死の島の洞窟でバルボッサに刺されたジャックが月光の下で骸骨に変わるシーンで、金貨を指の上であそばせながら言うせりふ。
 字幕では「1枚かすめたのさ」になっていて、確かに状況としてはその通りなんですが、このせりふがおもしろいのは、「誘惑を前にして、堪えきれずに盗ってしまった」というある種の不可抗力性を主張しているところで、いかにもジャックらしくてお茶目なんですね。
 ちなみに、mateは仲間に対する呼び掛けで、ジャックはウィルにもノリントンにも使っていますね。
 タイムズ・スクエアなどという単語が最初に思い浮かびますが、四角は四角でも正方形。「辺の長さが等しい」からイメージするとわかりやすいですが、「貸し借りなしの」という意味で、エリザベスを盾にジャックが逃亡を図るときに、"I saved your life, you saved mine, we're square."(俺がお前の命を救い、お前が俺の命を救ってくれた。これでおあいこだ。)というせりふで使われています。
 もう一度同じ単語がでてくるのが、船の上でウィルを梁にぶらさげたままジャックが一演説するところ。「お前の父は海賊でいい奴だったということを受け入れられるのか、否か。」の後に、"But pirate is in your blood, boy, so you'll have to square with that someday. "(ただしお前には海賊の血が流れている。いつの日かそれを受け入れなくてはいけない。)
 自分自身と海賊の血、両者を矛盾しないものとして一致させる、受け入れるということだと思いますが、字幕では「”海賊の血を拒むべきか否か”」と出るところです。ジャックの言葉の意味を図りかねて、ウィルの表情が変わるところがカットで映るわけです。
 無謀なジャック救出劇をはかったウィルとジャックがノリントンの部下に囲まれたところで、ウィルが「ここで死ぬなら本望だ」と言い放った後のノリントンとウィルのやりとり。
 ノリントンに”You forget your place”(自分の場所、立場を忘れている→身の程をわきまえろ)と言われ、ウィルは"It's right here, between you and Jack."と答えます。自分のいる場所はまさにこのノリントンとジャックの間、すなわちジャックの前に立ちはだかってノリントンの邪魔をする、ノリントンと敵対する、という感じですね。字幕では一足飛びに「最後までジャックを守る」となっているわけで、「守る」と言い切られると、反射的に「どっちが?」と思ってしまうんですが(笑)、ウィルとしてはジャックのためなら死も辞さない覚悟であの場にいるわけですから、気持ちは買ってあげたいものです。
 ちなみにその前のせりふで、ここで自分がジャックと一緒に死ぬことになっても、ということをあらわすのに、「絞首刑執行人が一足ではなく二足のブーツを得ることになっても」("If all I have achieved here is that the hangman will earn two pairs of boots insead of one, so be it.") という言い方をしていておもしろいです。
 良いことにも悪いことにも使われて、賞賛に値する、罪に値する、といった意味ですが、ジャックが女性達から平手打ちを食らうところで、この単語が出てきます。
 まず、トルトゥーガで赤毛のスカーレットから殴られた後にジャックが言うセリフは "Not sure I deserved that." で、この場合は、こんな仕打ちに値するようなことをしたかどうか、ジャック自身は定かではありません。次に登場する金髪の女性に「ジゼル!」と近寄ると、「あの女は誰?」とまた殴られてしまうんですが、この時には "I may have deserved that." と、それに値することをしたかもしれない、とやや自覚があるわけです。(英文法のお勉強ではmay+現在完了で過去の可能性「〜したかもしれない」と習うやつですね。)そして、ギブスが集めてきた海賊のクルーの一人、アナマリアに殴られたところでは、ウィルが "I suppose you didn't deserve that one either"(君がそれに値するとは思わないけど。(でも違うみたいだね))と尋ねられると、ジャックは "No, that one I deserved."と、この場合は身に覚えがありありなわけです。"No”だと後に続くのは”I didn't deserved”のような気がするんですが、ウィルのせりふ全体を否定している、と考えるのでしょうね。(同様のYes/Noで混乱するのが、バルボッサがウィルの咽をかっ切ろうとしているところで、ジャックが "You don't want to be doing that, mate."(本気でそれをやりたいわけじゃないだろ?)というとバルボッサが "No, I really think I do."(いいや、本気だ)と応えるところ。)
 ともあれ、ジャック、罪多き男です(笑)。
 ウィルとギブス達がブラックパール号の船底に捕らえられ、牢の横で海賊が床にタールを塗っている時にコットンのオウムが叫ぶフレーズ。
 実際の海賊が使っていたかどうかは定かではありませんが、スティーブンソンの『宝島』で"shiver my timbers"と使われたことから、海賊が使う言葉として有名になったようです。shiverが震えること、timberは木材、船の甲板梁のこと(木こりが「(木が)倒れるぞー」という時にも使う)で、船が何かにぶつかって甲板梁が震える状態から、驚き、ショックを表し、ひいては何か災難が起きたかもしれないことを示唆するとのこと。映画の中では、オウムのセリフの後にギブスが「少し塗り残した(you missed a bit)、と言っている」と解説しているので、ピンポイントではないけれど、良くないことを連想させる(タールの塗り残しがあれば浸水する)、という感じでしょうか。
 コットンのオウムが絶妙なタイミングで繰り出すわかったようなわからないようなしゃべりはいい味を出していますよね。
 他に、ジャックがコットンに「生命を賭けて命令に従う勇気があるか?」と訊ねたところで、"Wind in the sails!"(帆に風→追い風だ)。死の島の近くで座礁船の残骸が散らばっている海峡で"Dead men tell no tales"(死人に口なし)。エリザベスがギブス達を解放し、ウィルを助けに行こうとした時には "Any port in the storm"(字幕では「手出しは災難」) 。嵐のときはどんな港でもいい、避難場所を選んではいられない、ということから、「溺れる者は藁をもつかむ」という感じのフレーズですが、ここでのイメージは、港に避難と自分の身の安全優先という感じですかね。
 "If you were waiting for the opportune moment…that was it."(チャンスを待っていたのなら、さっきのがまさにそれだ。)
 死の島の洞窟でバルボッサたちをやっつけた後、ウィルが不甲斐なくもエリザベスと盛り上がりきれず「フィアンセが心配している」などと言ってしまった直後、お宝抱えたジャックがウィルに言うせりふ。字幕では「間抜け!」と直接的に表現されていますが、確かに「ばかだなあ」という意味が含まれていて、それを言葉で言わないで表わしているところが味のある所だと思うんですが。(ところで、二人の雰囲気をぶち壊してしまったのはジャックという噂もありますが、それ以前に「エリザベスはノリントンと結婚する」とバラしてしまわなければ、展開は違っていたかも(^^;?。)
 現在形の"That's it!"は、文脈によって「まさにそれだ、それが問題だ」など、色々なニュアンスで使われるフレーズですが、エリザベスが呪いを解く儀式の時に、殺されると思っていたにもかかわらず手の平をナイフで切られただけだった意外さを表現する時には、"That's it?"(これだけ?)と使っています。
 "opportune moment" は「好機、絶好の時、チャンス」の意味ですが、洞窟でエリザベスを見つけたウィルがあわてて助けにいこうとしたところでジャックが "We wait for the opportune moment"(チャンスを待て)と言っています。(しかし、ウィルは早まっちゃうんだな。)そしてまた、ジャックがバルボッサを丸め込もうとしながら金貨を掠めている最中にも "Wait to lift the curse… until the opportune moment."(呪いを解くのは、ちょうど良い時まで待て)と同じ言葉を使ったため(と、もちろん金貨を取ったのに気が付いたため)に、ウィルがピンと来るわけです。そこで、ジャックがウィルを裏切ったかのように、「そもそも最初から、自分の名前を知った時から、これ(ウィルを出しにブラックパール号を取り戻す策略)を狙っていたんだな。」と言い、バルボッサがジャックを信用するに至ります。
 
 "Idiot. He has nowhere to go but back to the noose."
 (まぬけ。奴には絞首刑に戻ってくる以外、行く場所はない。)
 映画のラスト近く、絞首台から逃げ出し、ジャックが口上の途中で城壁から海に落ちるのをみて、ジレットが言うせりふで、字幕では「まぬけ。先が思いやられる。」と出るところです。原文だともうちょっと具体的な表現で、「あの様子じゃ、どうせ逃げてもまたつかまって絞首台に戻ってくるに決まっている。」という感じでしょうか。
 nooseは絞首刑用の輪なわ、the nooseで絞首刑という意味でも使われます。
 ちなみに、絞首台はgallowsで、映画の最初の方でジャックがエリザベスを盾にして港から逃げ出したシーンで、ノリントンが "Gillette, Mr. Sparrow has a dawn appointment with gallows...I would hate for him to miss it."(ジレット、ミスター・スパロウに夜明けの絞首台の予約を。間違いなくだ。)と言う時に出てきます。
 

*(非公式)聞き取り英語スクリプトサイトはこちらにあるので、自分で気になったところはがんがんチェックしてみてください。

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