最近観たビデオ/DVDから




『ハーモニー』Cosi
 デヴィッド・ウェンハム(←と表記するのは嫌なんですが、まあとりあえず)の過去作品で日本公開されたものは本当に数える程しかないんですが、これは一応レンタル屋に置いてあったりするのでDWコーナーに先駆け(本当につくるんか!?)ご紹介。(ちなみにレンタル屋では「青春」とか「女性」とかそんなキーワードのコーナーにあるみたいです。)

 演出家志望のルイスは、政府が始めた舞台パフォーマンスを利用した精神病患者のリハビリプログラムに応募し職を得る。精神病患者の中から舞台に立つ者をオーデションをし、演目を決めようとするが、一人の患者がモーツアルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」を強硬に主張する。他の誰一人として歌った経験もなければ、イタリア語の素養もない。てんでばらばらの患者たち、無理難題、おまけにプライベートでは彼女との仲も暗礁にのりあげ、と困難に直面するルイス。果たして舞台の幕はあがるのか?

 もっと暗い話を想像していたのですが、予想より明るく、コミカルだけれど過剰ではなく、自然に物語に入り込め、ほんのちょっとだけエキセントリックな登場人物一人一人に愛着がわいてきます。
 DWは母親の猫を焼き殺してしまい病院送りとなったダグという青年を演じています。「あんたヤバイよ」って感じと的を得たコメントを吐く微妙なバランスをエッジのきいた演技で上手く表現しています。ぴーでぴーなラップを披露しちゃったり、キュートな笑顔と一線超えてる目つきが同居する表情、と、一挙手一動から目が離せないのです。良い人役を演じている時もいいけれど、こういう役がこなせる役者というのはやはり惚れ甲斐があるというもの。(1996年の作品なので、DWは今より若くて線が細いです。)
 物語の方は、ラストの「あの名曲」にじーんとくるハートウォーミングエンディング。なんだか意外な程にちょっと良い映画なのです。



『ラブ・ファクトリー』The One and Only
 リチャード・ロクスバーグ目当てで見てみました。単なるラブコメかと思いきや、なかなか楽しくラストはちょっと感動のハートフルラブストーリーでした。イギリスのユーモアとフランスのお洒落な感じがちょうどよくブレンドされていて見ていて居心地が良い。

 リチャードが演じるのは、キッチンの工事を生業とするちょっとうだつのあがらない男・ニール。今をときめくサッカー選手の美人妻に一目惚れしてしまうのですが、予期せぬ展開、途方に暮れる状況下で右往左往。
 最初は「趣味はキッチン」なんてどーいう変人なんだよー、と思ってみていましたが、これが結構いいヤツで、おバカな位純なところがかわいかったり。スーツ着てこれほど似合わないところがミソ。しかも、シャンペンとチョコレートを両手にかかえて! いやー、RRは本当にいい役者です。
 で、相手のヒロインも「自分の人生は自分で決めるわ!」と勝ち気な所をみせるけれど、応援したくなるところが見ていて楽しいのかも。二人のちょっと変わり者の友人達も上手くコメディ味を出していて笑えます。最大の立役者はムガーラちゃん役の子供なんですけどね。

 原題The One and Onlyがなぜ「ラブ・ファクトリー」になるのかというと、多分大作「ラブ・アクチュアリー」にひっかけたんだと思いますが、逆パターンはあってもこの作品を見ようとしてラブアクを「間違えて見た」という人間はあまりいないことでしょう(笑)。(いや、ラブアクもおもしろかったですよ。RRが出てなかっただけで。)




『ビフォア・ザ・レイン』Before The Rain
 『ダスト』のミルチョ・マンチェフスキ監督のデビュー作。個人的にはこれ一作で殿堂入りという感じ。ちなみにこの作品、1994年のヴェネチア国際映画祭で”金獅子賞”以下10部門受賞という快挙を成し遂げています。

 物語は三部構成。第一部はマケドニアの美しい山岳地帯の修道院で「沈黙の誓い」をたてた若い修行僧キリルと追われる少女ザミラの物語『言葉』。第二部『顔』では舞台がロンドンに移り、編集者アンを中心に、マケドニア出身のカメラマンの愛人・アレックスと夫との間の人間模様が語られる。そして、第三部『写真』では、仕事を捨て故郷に戻ったアレックスが目の当たりにする村の分裂、そしてかつて愛した女性ハナとの物語が描かれる。3つの物語は交錯し、つながりながらも捻れ、まるでウロボロスの輪のようです。

 旧ユーゴスラビアから独立したマケドニア共和国におけるマケドニア人とアルバニア人の対立、という背景をふまえながらも、ここに描かれているのはドキュメンタリーではなく普遍的な人の業。一つ一つの物語はけっして複雑でないにも関わらず、美しい映像の中に閉じ込められた三つの物語がもたらす一つの物語はとてつもない怪物をはらんでいます。

 見終わって絶句してしまった作品の感想を書くのはとても難しいのですが、いかなる予想とも異なる作品でした。「社会派」というレッテルを貼れる良作なら他にいくらでもありますが、そんなシンプルな所にこの作品の意義がある訳ではありません。”奇才ミルチョ・マンチェフスキ”の呼称は伊達ではないのです。凝縮されたエッセンスは一滴の劇薬のようであり、静かな湖面に投じられた一石がもたらす波紋のようでもあります。

 しかし、なぜこの作品のDVDは発売されていないのか! 見返すとあらたな発見がでてくる作品ですし、作品の普及のためにもぜひともDVD化してほしいです。



『バスカヴィルの獣犬』The Hound of the Baskervilles
 シャーロック・ホームズと言えば、故ジェレミー・ブレッドの当たり役。彼以外が演じることは考えられない、という位強烈なイメージを残していましたが、こちらは新たなキャストで作られたBBCドラマで、ホームズを演じているのは『ヴァン・ヘルシング』でドラキュラ伯爵を演じているリチャード・ロクスバーグ。(Richard Roxburghの実際の発音は確かに「ロクスバラ」の方が近いです。)

 これが実にいい! 今までのホームズ像から離れ、むしろ原作に近い形での演出というのが制作側の意図らしいのですが、ナチュラルにはまっています。スチールだけだといまいちぴんと来ないのですが、実際に動いてしゃべるとめちゃかっこいい。『ムーラン・ルージュ』の伯爵と同一人物とはとても思えません(笑)。注射器片手のお姿までナチュラルに演出されているのにもびっくりしました。ワトソン役のイアン・ハート(『ハリー・ポッターと賢者の石』で「闇の魔術に対する防衛法」を教えるクィレル教授役の人)も、目だけで演技ができる実力派で、とても良いバランスを作り上げています。
 唯一の若い女性、ステープルトンの妹役の人が先日観たばかりの『ゴーメンガースト』の夢見がちのお姫様を演じていたネーブ・マッキントッシュ でした。重なれば重なるものですね(^^;。

 イギリスの荒涼とした風景もため息が出る程美しく、映像センスがとても気に入りました。クライマックスは原作よりドラマチックなエピソードになっていますが、全体として非常に良くまとまっていますし、脚本、俳優、演出共に良い形に仕上がっていると思います。
 個人的には、この配役・スタッフでシリーズ化してくれるなら、BOX買いでもします! という位気に入りました。また作ってくれないかしら。。。




『ゴーメンガースト』Gormenghast
 マーヴィン・ピーク原作の三部作をBBCがテレビドラマ化したDVD(日本版が出ています)を縁あって見せていただきました。原作は読んでいないのですが、約4時間、4部構成の映像には思いのほか見入ってしまいました。(原作より人物像がわかりやすい筋立てになっているとのことでしたが。)

 ゴーメンガースト城とその臣民という閉じられた世界で、貧民階層からのし上がろうというスティアパイクは城の有力者達に取り入り、血に手を染めながら、地歩を固めて行く。一方、城主の忠実な従者・フレイは城主亡き後、城を追われるが、陰ながら城の跡継ぎ・タイタスを見守っている。
 白いカラスと数十匹の白猫に愛情を注ぐタイタスの母、夢見る乙女・タイタスの歳の離れた姉、権力に執着しスティアパイクに付け入られるタイタスの双子の伯母等々ちょっとエキセントリックな登場人物が、見事な背景と衣装に包まれてストーリーを展開させて行きます。

 リドリー・スコット、テリー・ギリアムらが企画に着手しながら、夢果たせず、という結果に終わったというのもさもありなん、というか、彼らにまかせたらお金がいくらあっても足りないだろうなあ、というゴシック異世界ファンタジーな世界。(ジュネ&キャロなんかも映像化したくてたまらなかったのでは?)背景書き割り風のCG等もちろん完璧ではありませんが、限られた枠の中では、豪華な衣装(これだけでも一見に値する!)、キャラクターを立たせた見事な演出等、良く出来た映像だと思います。

 美しく冷徹な悪役スティアパイクを演じているのはジョナサン・リース・マイヤーズ。割と現代物のイメージが強いのですが、こーいう時代がかった衣装に身を包み、剣を振り回すというのも、実にはまり役ではないですか! 同じ美形でも血筋の良いキャラになってしまうジュード・ロウに対して、ジョナサンは這い上がりキャラが似合うのだなあ、とあらたな発見。対する従者・フレイを演じているのは、リー様、こと、クリストファー・リー。世捨て人となったフレイの姿は「あれ、ガンダルフ?」というお姿だったりしますが(笑)、最後まで活躍するおいしい役どころです。その他、夜な夜な大型包丁を研ぐフレイの宿敵・料理長、一挙手一動シンクロしている双子姉妹、髪の立った医者とハイミスな妹、女性と縁がない教授陣等々、異色キャラとコメディ要素もふんだんにちりばめられ、それを見事に演じる役者達は見応えがあります。

 海外ドラマなので知名度はやや低めかと思いますが、映像的にも役者的にも、もっと知られて良い作品だと思います。

 こちら(英語サイト)で真ん中の写真列右はじ上の「preview」をクリックするとトレイラーがあります。




『インディアン・ランナー』The Indian Runner
 これまでもヴィゴ・モーテンセンを俳優として評価してきたつもりだったんですが、もしかして彼の実力を過小評価していたかも・・・と思ってしまいました。

 ショーン・ペン監督第一作のこの作品の舞台は、1968年ネブラスカ。まじめで温和な警察官の兄(デビット・モース)と粗暴で問題ばかり起こすベトナム帰りの弟(ヴィゴ・モーテンセン)の物語。
 と書くと、なんだか観る気がわいてきませんが、親と子、人生の夢と現実、兄弟の屈折した感情等が実に丁寧に描かれていて琴線に触れる作品です。兄にも弟にも感情移入せざるを得ない相矛盾する多面性こそが人間だと思うのです。 せりふが少なく、静かな演技に感情が込められた地味な映像にもかかわらず、画面から目が離せません。役者陣の演技の素晴らしさもさることながら、こういう映像を作り上げたショーン・ペン監督もすごい!

 ヴィゴは「もう反則だよー」と思う位にかっこいい軍服姿で登場したかと思うと、どうしても自分を押さえきれず破滅へと向かうキャラを奥深い演技で演じきっています。
 俳優も脚本も映像もGREATでした。



『サウンド・オブ・サイレンス』Dont' Say A Word
 劇場で予告を観たのは覚えているんですが、もっとサイコでこわーい映画かと思っていたら、結構詰めの甘い映画で、まあ、ショーン・ビーン目当てで観るにはお気楽に楽しめる作品でした。

 精神科医のネイサン(マイケル・ダグラス)は同僚の医師から分裂症の患者・エリザベスの診療を頼まれる。多重人格で時に凶暴になるというエリザベスは意味不明の言葉しかしゃべらない。翌日、ネイサンの娘・ジェシーが誘拐され、犯人はネイサンにエリザベスから6桁の数字を聞き出すことを要求する。タイムリミットは5時。ネイサンは過去を封印しているエリザベスの口を開かせることができるのか・・・。

 お膳立ての割には、あっさり展開してしまって、ミステリーというほどの謎もなく、一体この監督がどういう映画を作りたかったのかまったくもって謎なんですが。でも、意外とみている間はそんなにつまらなくないんですよ。謎になってないから、逆にどーいうオチにするのさ? という興味が出てくるというか(^^;。マイケル・ダグラスはやっぱりそれなりの役者だし、カウンターアタックの強気さがいいっす。
 ショーン・ビーンは誘拐犯人グループの首謀者なんですけどね、頭が切れるっぽいにもかかわらず、彼の人生を振り返るに、なんか割にあわない道を突き進んでいる気がするんですが、最後の台詞を聞くと、「そうか〜、魅入られてたのか!」と妙に納得してしまうと(笑)。
 骨折して動けない、かつ、犯人達に見張られているネイサンの妻が、ショーン(役の名前を忘れてしまいました(^^;)の指示でつけたTVで、ショーンが「これがいい」っていうプログラムは『クロコダイル・ハンター』ですよね。映画版でデヴィッド・ウエンハムが出ているやつ。映画とまったく関係ないところで受けてました(笑)。(←つまりはこれが言いたかったらしい(爆)。)

 ところで、原題は"Don't Say A Word"で、邦題は作品とは何の関係もないような・・・。



『アンダーワールド』UNDERWORLD
 It's Cool!
 吸血鬼VS狼男といっても、背筋が凍るほど怖いわけではなく、かっこえ〜!って方ですが。
 「MTV界の異才による映画、ゴシックでスタイリシュな映像」と、日本では局所的にしかスポットが当たっていませんでしたが、個人的にはスタイリッシュアクションエンタメ映画として『マトリックス』(←あくまで第一部)以来の快挙じゃないかと思います。

 ヴァンパイアとライカン(狼男族)の長く熾烈な争いは人間達のあずかり知らぬ所で終わることなく続いてきた。ヴァイパイアの戦士セリーンは、ライカンを追ううちに彼らが一人の人間を追っていることに気づく。ライカンがその人間を追う目的は何か? ヴァイパイア一族をたばねる現リーダー・クレイヴンはセリーンの話に耳を貸そうとしないが、今が一族の危機と悟ったセリーンは眠りについている長老ヴィクターの「再生」を試みる。

 冒頭、重厚な街並み、降りしきる雨の中、レザースーツと黒マントに身を包み、人間ではあり得ない動作で、セリーンはスタイリッシュかつハードなアクションを展開します。とりあえず見事な静と動の映像に圧倒され、ヴァンパイア館のゴシック様式と色使いのにくい演出にため息をついている間にすっかり作品に魅了されていたわけですが、物語面でも意外ときっちりした設定があって、「ヴァインパイアなんて使い古された設定を・・・」と思っていると、セリーンの視点で観始める観客に対してちゃんと「仕掛けて」いるんですね。あんな泣かせる設定があるとは予想外。

 すべてのシーンを自ら絵コンテで表現したというレン・ワイズマン監督ですが、焦点の絞られたこだわり具合がすばらしいです。映像がスタイリッシュになるかならないかは「画面から何を取捨選択するか」にかかっているのではないかと思います。
 冒頭のセリーンは草薙素子を彷彿させますし、物語の作り方もジャパニメーションを彷彿させるものがあるのだけれど、もし影響を受けているのだとしたら、非常に良い形で化学作用しているなあと思います。

 CGを使わない特殊効果へのこだわりもすごいですが、起用している俳優さん達がきちんとした演技派という点も作品に深みを与えていますね。今までのイメージとまったく違うセリーン役のケイト・ベッキンセイル(『パール・ハーバー』)は、作品の要ですが、ワイヤー・アクションもこなしており、元バレリーナという身のこなしが美しいです。動作は人間離れしているが、内面は人間らしさをもつキャラクターを見事に演じています。(”ルシアンとベレン”ならぬ”ルシアンとソーニャ”と書くと、一部の人にはネタばれなんですが(^^;)狼男族のリーダー・ルシアンを演じるマイケル・シーン(『タイムライン』)はまなざしがとても印象的。ヴァイパイアの長老ヴィクター役のビル・ナイも迫力あります。

 最後は「続編作るぞ!」という意気込みがひしひしと感じられる終わり方ではあるんですが、それが、まあ、ストイックというかハードボイルドというか、粋なんですよ。
 めでたくPart2の製作が決まっているようです。

 しかし、ケイト・ベキンセイルが今度はヴァンパイア・ハンター役で登場する『ヴァン・ヘルシング』は、この映像を見せられた後では、三の線で期待していた方が無難かも(^^:。



『ミルクのお値段』The Price of Milk
 「日常から地続きで非日常の世界に入るファンタジー作品というのは、好みが割れるところでしょう。わたしは本来的には異世界ばりばりファンタジーよりこういう小作品を愛するタチなので(そのはずだ(^^;)、結構気に入りました。

 ある美しい緑の谷間に人もうらやむような仲の良いカップルが住んでいました。牛たちに囲まれた夢のような日々ですが、ルシンダはふと不安になります。「この幸せは永遠に続くのかしら?」。彼女は親友に相談し、刺激が必要、という言葉にのって、ロブの愛を試すようないたずらをしてしまいます。ところが、親友のドロファラも実はロブのことが好きだったのです。
 大事なものと引き換えにあなたは何を差し出せますか?

 登場人物の馬鹿さ加減が許せない、というほどこの作品はシリアスではないのです。馬鹿さ加減もファンタジー作品世界の構成要素、というか。あの美しい映像の前にそんな俗世界的価値観を持ち込んでもしょうがないよね、と思ってしまったのでした。オープニングのキルトに始まり、ミルクの白に黄色のスイミングキャップ、赤いサリーと緑のコントラスト、いやー、あの発想にはため息です。一歩間違うと甘々の砂糖菓子になってしまうところですが、この調理法は独特ですね。

 牛飼いのロブを演じているのはカール・アーバン(『ロード・オブ・ザ・リング』エオメル役)、監督のハリー・シンクレアはピーター・ジャクソンのお友達で、『ロード・オブ・ザ・リング』でもイシルドア役で登場しています。



『ケリー・ザ・ギャング』NED KELLY
 オーストラリアで人気のある実在のアウトロー、ネッド・ケリーにヒース・レッジャーが扮し、その右腕とジョー・バーンをオーランド・ブルーム、敵役の警部をジェフリー・ラッシュが演じています。

 19世紀、大英帝国の植民地オーストラリア。貧しいアイルランド移民の子ネッド・ケリーは、えん罪で逮捕され、出所したのちも難癖をつけられ、図らずも弟と二人の友人と共に”ケリー・ザ・ギャング”として国中に名をとどろかせるお尋ね者となる。義賊的な行動は大衆の心をつかむが、威信をかけた警察は彼らの逮捕のために大部隊を差し向ける。

 最後まで「違和感」があったオーランド。演技力うんぬんというより、場違いな感じがぬぐえませんでした(^^;。ハンサムな女たらし君という設定なんですが、オーリイの顔立ちって品がある感じがするので、どうもしっくりこない上に、まー見事にあごひげが似合わないのね。
 ジェフリー・ラッシュは思った程活躍してくれないし、ヒース・レッジャーはどうでもよいし、となんだかぴんとくるものがなく終わってしまった作品でした。

 うーむ。まあ、オーストラリア・プチ・マイ・ブームの一環として、知識インプット、ということで良しとするか。。。



『ダスト』DUST
 「悪党だけど理由なく人を殺さない」けれど「愛するより殺すことに長けている」と形容されるガンマン・ルークを演じているのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、ファラミア役のデヴィッド・ウェンハム。そして、復讐にかられて兄を追いかけるルークの弟イライジャを演じているのは、『恋するシェイクスピア』、『エリザベス』でおなじみのジョセフ・ファインズ。
 役者興味だけでも目をひきましたが、中身の方も非常に良い映画に出会って嬉々としています。

 2000年、ニュヨーク。黒人青年エッジは強盗に入った先のアパートで、老女アンジェラに鼻を折られ、銃で脅されながら彼女の物語を聞かされるはめに。それは1900年アメリカ西部に始まる、兄弟の物語だった。同じ娼婦に恋をし、弟イライジャは結婚、兄ルークはある日突然姿を消し、ヨーロッパからオスマントルコ帝国末期のマケドニアへとたどり着く。革命家にかけられた多額の報奨金を狙う賞金稼ぎの悪党団に加わったルークが、まさに賞金首を仕留めようとしている時、岩陰にはルークに標準を合わせている弟イライジャがいた。
 現代のNYと100年前のマケドニアを行き来しながら、独特のストーリーテリングが展開されます。みているうちに、兄弟の行方もさながら、エッジとアンジェラの行方も気になり、「語り手は誰か?」という最後の問いへの答えまで、物語を掘り起こし尽くさねば気が済まないという思いに駆られます。
 この物語は、おそらく映像より小説の方が得意とする構成だと思いますが、立ち上がった物語の中で、生と死がリアルに跳ね、映像のもつ力を最大限に引き出しているカメラ・ワークは見事です。デヴィッドにみーはーするつもりでいたのに、それ以上にこの作品のフレームに呑み込まれました。

 そしてある意味映画以上に感動したのが予告編。レンタルDVDにオリジナル版と日本版両方収録されているのですが、だいぶ違っていて日本版はこの手の映画を観て気に入るであろう層のツボをよーく心得た編集になっています。完璧。宣伝者冥利に尽きるとはこのことでしょうね。↓公式サイトでぜひどうぞ。

http://www.shochiku.co.jp/dust/



『えびボクサー』CRUST
 昨年夏、渋谷ピカデリーで『パイレーツ・オブ・カリビアン』の横でひっそりかつ賑々しく上映されていた『えびボクサー』。個人的には巨大えびより、ギブス役のケヴィン・マクナリー主演という方が興味対象だったんですが。ともあれ友人の強力なプッシュでDVDをみるはめに(笑)。

 なんか意外とね、これが普通の映画なんですよ、2メートル10センチのえびが出てくる事を除けば。
 大成しなかった元ボクサーで、今はジムのトレイナー兼パブ経営者のビルが、「モノになるかもしれない!」というMr. Cを見つけて、この秘蔵っ子に夢を賭ける。しかし、人々はMr. Cの外見に惑わされなかなか真価を認めてもらえず、売り出すためにあれやこれやと涙ぐましい努力を重ね、やっとテレビ局からの出演オファーをもらう。にもかかわらず、晴れの舞台でジムの心に浮かんだものは・・。

 人生で大切なものは何か? 巨大えびを通して、人々が大切なものを見いだすハートフルヒューマンコメディ。K・マクナリーの共感をよぶ演技とえびの涙目に注目。

 以上、嘘は一言もありませんが、すべてを語っているわけではないかもしれませんのであしからず(笑)。

 ちなみに、存在理由は「21世紀だから」で片付けられてしまうMr. Cはマンティス・シュリンプで、「エビ」ではなく日本では「シャコ」と呼ばれるものですね。撮影に使われているのはワイヤー操作タイプとリモートコントロールタイプの二種類(意外とハイテクであった!)で、グラスファイバー及び発泡プラスティックでできているそうです。




『リベリオン-反逆者-』Equilibrium
 第三次世界大戦後、戦争の根源とされた「人間の感情」を抑制する薬が開発され、人々は薬の投与を義務づけられ、本や絵画や音楽が一切禁止される社会が形成された。違反者を取り締まるクラリック(聖職者)は「GUN=KATA」という究極の戦闘術を身につけている。クラリックであるプレストンは相棒のパートリッジが道を外れたことに端を発したいくつかの出来事をきっかけに「感情」を取り戻し、この社会へ疑問を抱き始める。

 超アナクロニズム(『華氏451』へのオマージュとか言われても困るような)、かつ、つっこみどころ満載な甘々な設定は、要するに「ガン・カタ」というアクションシーンを撮りたかったための方便とみれば許せるんですかねえ。一回薬を投与しないと感情が戻っちゃうなら、薬を投与しないと他の機能も異常をきたすように仕込んでおくくらいの配慮はすべき。最強の攻撃力をもつクラリックが立て続けに楯つくようでは体制として機能していない証拠でしょう。
 と、まあ、突っ込み始めると止まらないのでやめておきますが、メインである『マトリックス』に比する無敵なアクションシーンを支える設定「ガン・カタ」というのは東洋の肉体鍛錬と西洋の拳銃技術を極め融合させることで可能となる究極の戦闘技術だそうで、ネーミングの由来は「銃(ガン)+型(カタ)」だそうです。弾丸避けまくり〜、敵を倒しまくり〜、で、クライマックスで刀まで登場してしまう頃には、もう好きにしてください、という感じでした(^^;。
 ファーザーも何が楽しくてファーザーやってるのかわからないですしねえ。(警備甘過ぎ!)
 スタイリシュになったかもしれない要素を持ちつつ、見事になり損ねている感じです。。。

 ともあれ、ショーン・ビーンのために観た映画なので、詰め襟クラリックの制服が妙に似合っているショーンを観れて満足でした。しかし、イェーツの詩集を読みふける姿はとても似合うのですが、彼だってクラリックなわけで、あの「ガン・カタ」ファイトができるはずですよね。ちょっと位見せてくれたっていいじゃん、けち〜(笑)。ちなみに彼は前半にしか出てきませんので、これから観る方はご留意ください(^^;。



 『ハルク』HULK
 エリック・バナ(『トロイ』のヘクトル役)と言えば、とりあえずこの主演映画、ということで、観てみました。

 科学者ブルース・バナーは研究所で起きた事故により致死量のガンマ線を浴びるが、奇跡的に無傷で助かる。しかし、それは、自らを実験台にした父デヴィッドから受け継いだDNAのせいであり、「怒り」を起爆剤としてモンスター「ハルク」に変身してしまうという事態を引き起こした。軍隊はモンスターを捕らえようとするが・・・。

 原作のマーヴェル・コミックの内容は知りませんが、意外に父VS子という複雑な設定になっているのはおもしろかったです。でもねえ、正直138分もかけて語る程の物語ではないんですわ(^^;。もうちょっとテンポ良く回してくれれば、よかったのに〜、と思います。あと、ハルクがCG丸だしなのがいまいちかな。『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムと比較するのは厳しすぎとは思いますが、それでも、やっぱり生身の演技の中でアニメちっくに浮いてしまうので。(ハルクが跳躍するシーンは壮快!)コミックのコマ割りを意識したのであろう、画面分割は、効果的にはまっている所もいくつかあるのですが、やや多用し過ぎでうざいです。
 ブルースの恋人役を演じるジェニファー・コネリーは好演。いい女優さんになりましたね。
 エリックの繊細な表情が観れるので、彼に興味のある方はとりあえず必見。



 『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』 League of Legend
 1899年、鉄仮面の”ファントム”率いる超近代兵器で武装した悪の軍団が、ヨーロッパの平和に危機をもたらす。大英帝国の軍事情報部の”M”はそれに対抗するため、伝説的なヒーローによるチームを結成させる。
 チームのメンバーは、『ソロモンの洞窟』のアラン・クォーターメイン、『海底二万里』のネモ船長、『透明人間』の透明人間スキナー、『吸血鬼ドラキュラ』のヴァンパイア、ミナ・ハーカー、『ジキル博士とハイド氏』のジキルとハイド、『ドリアン・グレイの肖像』の不死身のドリアン・グレイ、『トム・ソーヤの冒険』のトム・ソーヤ(米国CIA諜報員って元ネタこれだったとは観ている間気がつかず(^^;)。

 これだけのキャラを揃えたのだからもっとハチャメチャなことをやってくれるのかと期待していたんですが、一同に会しているだけで、特別な相乗効果はないんですね。19世紀末のロンドン、ドイツの飛行艇、ノーチラス号、クラシックかつ超近代カー、高速マシンガンVS不死身のファイティング、巨大化したハイド等々、「一度映像にしてみたかった」という気持ちは伝わってきますが、それ以上に観るべきものは・・・。
 アラン・クォーターメイン演じるショーン・コネリーはさすがの存在感。しかし、またしても時空を超えた戦士ですねえ(笑)。
 ”アラゴルンになり損ねた男”スチュアート・タウンゼント演じるドリアン・グレイは、個人的なキャライメージとしては、もうちょっと若くて笑顔に潜む邪悪さがほしいところです。

 まあ、頭使いたくない時の暇つぶし程度にはオーケーか。
 原作は『フロム・ヘル』のアラン・ムーアだったとは知らなかったわ。



『めぐりあう時間たち』THE HOURS
 たまにはこういう風に心を揺さぶられる感動ものもいいなあ。
想像を超える映像を観ることも映画の醍醐味の一つですが、一方で、普通の日常を描きながら、映画ならではの表現方法を観ることも映画の楽しみの一つです。

 1923年ロンドン郊外で作品を執筆中の作家ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)、1951年ロサンゼルスで夫のためにバースデイケーキを作る妊婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)、2001年ニューヨークでエイズに罹っている元恋人の詩人受賞パーティの準備をする編集者クラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)。それぞれの女性たちの一日を描きながら、各々のシーンが相互に作用し三人の生き様を浮き上がらせ、かつ、それらが最後に見事に一本の物語に収束していきます。

 予告編では「あなたは誰のために生きていますか?」というナレーションが入っていましたが、その問いに迷いなく答えられる人、他の人の価値観は自分の価値観と同じだと思っている人、あるいは生きることの意味なんて考えたこともない人はこの映画を観てもぐっとくることはないのかも。スクリーンの向こうで自分が生きるとはどういうことか、幸福とは何か、闇の中を手探りで這い進む登場人物たちをみるのは、結構しんどいです。特に”幸福な家庭”にいながら、自殺未遂の上、夫と子供たちを捨てる道を選んだローラ・ブラウンが、息子が死んだ晩に「後悔していると言えたらいいのに」という台詞はその後の台詞をすべて包含していてショッキングでした。アカデミー主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンも刃物の上を歩いているような演技が良かったけれど、ジュリアン・ムーアもメリル・ストリープもすばらしい演技でした。個人的にエド・ハリスは大好きなので、クラリッサにも感情移入しましたし。

 『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー監督、さすが、人間を描く視点は繊細です。



『G.I.ジェーン』G.I.JANE
 ヴィゴ目当てにこんなものまで観るのかい・・・、というセルフ突っ込みはさておき。
 デミ・ムーアがラズベリー賞を受賞した、といいますが、それほどNGな演技ですかね? 脚本も映像もいまいちなのは確かですが。まあ、どーせ、ヴィゴしかみとらんだろう、と言われれば、強く否定はできませんが(笑)。

 女性に閉ざされている海軍の実戦への道。政治家達の思惑で、テスト・ケースとしてSEAL(海軍のエリート偵察部隊)の12週間訓練プログラムにオニール少尉(デミ・ムーア)が参加することになる。脱落率60%という地獄のプログラムを率いるのは鬼教官ウルゲイル軍曹(ヴィゴ・モーテンセン)。1週間で音を上げるはずが、オニールはダブル・スタンダードを蹴りとばし、諦めない。

 鬼教官にふさわしくえげつないんですけどねえ、でも、登場していきなりD・H・ローレンスの詩を引用したりと、やっぱりかっこいいヴィゴでありました。とりわけ、ラストシーンの振り返り様の見返り美人ポーズは、もうこれだけで、この映画を観た甲斐があったというものです。(ちなみに訓練プログラムの卒業式、バッチを手渡す時に言う「おめでとう」は海軍だから"Welcome aboard"なのですね。)

 しかし、最後の実戦エピソードは「侵略者はどっち?」って視点がきれいさっぱり抜け落ちているので非常に気持ち悪いです。このシーンについて「石油のために戦争をするな」というヴィゴがどう思っているのかきいてみたいかも。(まあ”仕事”だからしょうがないのだけど。)

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