『コンスタンティン』
ぎゃははは、これ、かなり受けました。ヒットです(笑)。
無駄にかっこつけたアングルとか、いいですねえ。
原作はアメコミ「ヘルブレイザー」だそうです。
普通の人間にはみえないものがみえてしまう主人公ジョン・コンスタンティン(キアヌ・リーブス)。この救世主的ヒーローは、肺ガンで死にかけていて、悪魔払いをして天国に行きたいと願っているが、自殺の罪はあがなえないと天使ガブリエルに言われてしまう、という不健全ヒーロー(笑)。
ジョンは刑事アンジェラの双子の妹の死の調査に巻き込まれるうちに、この人間界における天使と悪魔の均衡が崩れ始めていることに気がつく。
このばかばかしい世界をスタイリッシュに描き出すミュージック・ビデオ出身のフランシス・ローレンス監督ってすごい!
天使ガブリエル(ティルダ・スィントン←「ナルニア」の白の魔女役の人)とサタン(堕天使ルシファ−)の使い方もそれなりにおもしろいです。小ネタ満載ですが、小道具としてさりげなく使っているので、鼻につきませんね。脇キャラも深そうなんですが、映画内では今ひとつ描ききれなかったところはやや残念。まあ、キアヌが超はまっているのでよしとします。
副題「喫煙撲滅キャンペーン」という噂がありますが(笑)、ともあれ、今年必見の映画の一つでしょう。
『ライフ・アクアティック』
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のウェス・アンダーソン監督(←予断ですが結構イケメン)の新作。期待通りの雰囲気、プラス、期待以上にプチ感動の作品でした。
主人公は人生の黄昏に足を踏み入れようとしている、ドキュメンタリー映画を製作する海洋学者スティーヴ・ジィスー(ビル・マーレイ)。このところヒット作に恵まれないスティーブですが、次作は親友を食い殺されたジャガーザメへのリベンジ。しかし、資金は底をつき、妻との仲は危うく、認知されていない「息子」を名乗る青年が出現。その「息子」の投資でやっと海洋遠征に繰り出しますが、海賊に襲われ、映画会社から送り込まれた監視役が人質に…。前途多難です。
この監督の作品はちょっと癖があるので合わない人は合わないだろうと思うのですが、作り物っぽい設定の中で、非常に厚みのある人間ドラマが展開している所がとても面白いです。薄っぺらい登場人物と派手な視覚効果で、展開はお約束通り、というはやりものとは対極にある感じ。例えば、スティーブが妻のエレノアに仮定の質問として「もし、ネッド(認知されていな「息子」)を養子にしたいと言ったら賛成してくれたか?」と問いますが、その前の展開からはエレノアが何と答えるのか予測が付かなくて、どきどきするのですね。
物語は醒めた視点&醒めたユーモアで展開するので、ラストにジャガーサメと対面する所がこんな意外な感動をもたらすとはびっくりなのでした。
海洋記事エキスパートの妊婦記者ジェイン役にケイト・ブランシェット、スティーブの妻エレノア役にアンジェリカ・ヒューストン(いやー、さすがです!)、スティーブのスタッフでめっちゃアクの強いクラウス役にウィレム・デフォー、と俳優陣もかなり豪華です。
海底生物は『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』のヘンリ・セリックがストップモーションアニメで表現しています。違和感のない楽しい演出でした。
そして、音楽がイケてます。デヴィット・ボウイのポルトガル語カバーとか、独特の雰囲気が映画にどんぴしゃです。
総じて良い映画を見せて頂きました。
『ルビー・カイロ』
どーしてこの映画にヴィゴ・モーテンセンとリアム・ニーソンが出ているんですか!?
角川春樹がハリウッド進出という、いかにも予想通りのくだらない映画なんですが。うーん、うーん、なぜ? そりゃ、確かにリアムも撮影したのは『シンドラーズ・リスト』で脚光浴びる前ですが。ある意味ネームバリューに関わらず良い俳優を選んだという点ではキャスティングはほめられるべきかもしれませんが…。
夫(ヴィゴ)が死んだ知らせが届いた妻が、夫の消息を追っているうちに、夫は「運び屋」で、実は生きている事に気がつく、というストーリー。リアムは知らずに犯罪に利用されていた「飢餓救済」組織をリードする博士役。
ほんと映画としてはだめだめです。役者ファンでどうしても観たい人だけどうぞ。
ちなみにヴィゴとリアムは同じ画面には出てきません。
冒頭、ヴィゴが演じる役の少年時代が写るのですが、その少年の目が「あ、ヴィゴが演じている人の少年時代だ」と一目でわかるほど似ていて、びっくりしました。
『ノーラ・ジョイス 或る小説家の妻』
アイルランドが生んだ天才小説家ジェイムズ・ジョイス。『ユリシーズ』『フィネガンズウェイク』と世界に名をはせた作家ですが、この映画はまだ世間に認められる前の時代を舞台に、彼の妻ノーラ・ジョイスに焦点を当てた映画です。ジェームス役にユアン・マクレガー。(←ここがポイント(笑))
だが、しかーし、ジェイムズって結構とんでもない男で、金はない、飲んだくれる、妻が浮気しているのではないかと嫉妬しまくりなんですね。天才小説家の妻になんかなるものじゃないよなー、と思ってしまいますが(笑)。映像がきれいな所とラストの後味が悪くない所が救いですね。
ユアンが歌ってますが、やはり彼はソロじゃなくて、ハーモニーだと良いですねえ。
『ボーン・スプレマシー』
『ボーン・アイデンティティ』の続編。
前作から2年が経ち、記憶を失っている元CIA諜報員ボーンは恋人マリーとインドでひっそりと暮らしているが、そこへ殺し屋が現れる。一方CIA本部では、内部の公金横領事件の鍵となるリストを奪われたベルリン事件の調査をしており、現場に残された指紋がボーンのものと一致する。過去から逃れられないボーンは過去と対峙しなければならない。
前作は「自分は誰だ?」というミステリーがあった訳ですが、今回はすべて明らかな上で、殺し屋とCIAと双方から追われるボーンがどう行動するのか? という一点だけを頼りに一本作ってしまっているところがある意味すごい。力まずに楽しめる展開で、ストーリーこれだけの割には、本当に良く出来ているなあと感心してしまいます。売りのカーチェイスは、確かに迫力ありますよ。前作のミニのカーチェイスも良かったけど、今回のモスクワタクシーでのカーチェイスも、派手さが売りではなくて、あくまでがんがんぶつかりスピンしながら逃げ回るわけで、車がぼろぼろになりながら走るリアルさが良いのです。
殺し屋役のカール・アーバンがまたかっこいいです。こちらも地味なんですが、存在感ばっちりで、個人的には彼のおかげで2割増楽しかったです。(映画館に行きそびれたのが悔やまれる。)
主人公ボーンの優れた身体能力&頭脳と表裏一体のストイックな感じと、それでいて微妙な人間性が添えてあるところが、大人のアクション映画のヒーローとして好ましいですね。
三部作らしいので、このトーンを壊さずに第三部もがんばってほしいです。
『28日後』
「トレイン・スポッティング」のダニー・ボイル監督の新境地作品として話題になった映画ですが、公開当時「恐い映画」「ホラー映画」みたいな宣伝のされ方をしていましたが、実際観てみるとちょっと違うなあと。
感染後10数秒で凶暴化してしまうウィルスが蔓延した街ロンドン。交通事故による昏睡から目覚めたジムは、非感染者たちが脱出した後の人気のない街に取り残された事に気がつく。ジムは非感染者のセリーナや、父娘親子に出会い、感染者と戦いながら、安全な場所を目指す。
感染者たちがゾンビさながら執拗に襲ってくるシーンだけみると確かにホラー映画っぽいですが、実はそんなに戦いのシーンは多くなくて、むしろ、ウィルスにおののく人間の窮地に関係なく美しい無人の街、郊外の田園風景、といったショットにぞくっとするような映画。街中では至る所死体が転がっていてしかり、という状況なはずだし、しかもその死体はまともな形でないものも多数だろう、という突っ込みはあるのですが、映像の美しさに免じて許してしまいます。
ウィルスは血や唾液を通して感染するのですが、それまでどんなに近しかった人でも、感染したら即殺さないと襲われる、という容赦のない状況で、何があっても生きのびる、ということを選択をできる人をむしろ尊敬してしまいます。わたしはダメ(^^;。
この作品がおもしろいのは、最初はセリーナに守られるようにぼーっとしていたジムが、「守らなければ」という気持ちに変わってゆく変化だったり、連れはお荷物になるから一人で生延びる、という考え方だったセリーナが少女のハナを守らねば、という気持ちに変わってゆく変化だったり、という極限での人間性が描かれているところでしょう。軍人の思考行動パターンもまたひとつの人間の有様なんでしょうが、感染者よりぞっとします。
ラストはレンタルDVDではハッピーエンドバージョンと劇場公開版とが収録されていますが、説得力があるのは劇場公開版の方でしょう。他にもいろいろなバージョンがあるらしいですが。
ともあれ、音楽の使われ方は素晴らしいです。
最新作「ミリオンズ」はファンタジーアドベンチャーなので、身構えずに観に行けます。楽しみ〜。
『猟人日記』
ユアン・マクレガー主演でなければ手が出ない作品ですが、ビートニク作家アレグザンダー・トロッキの小説"Young Adam"をマッケジー監督が映画化。
邦題と溺死した裸同然の女性の死体の横にいる主人公の写真をみると、なんか、ものすごーく猟奇な予感がしますが、それほどエキセントリックな話ではありません。
現在と過去の回想がスパイラルに繰り広げられる美しい映像、エロチックな要素とサスペンスな要素を刺激にしながら、何かを求めながら、何も得ることができない主人公を描く大人の作品。
愛を受けることも与えることもできない、感情を素通りさせるような乾いた表情のユアン・マクレガーが最高です。こういう映画をみるとユアン・マクレガーって、やっぱり顔と雰囲気だけじゃなくて、優れた役者だなあと思います。
映画の中でたばこを吸うシーンの減少と男のかっこよさの減少とは相関関係があるんじゃないかと思ってしまうほどに、小道具としてのたばこって重要よね。(まあ個人的刷り込みなんでしょうが。)
『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』
1939年、ニューヨークを謎の巨大ロボットが襲撃。巷を騒がせる科学者連続失踪事件との関連は?
特ダネを追う女記者ポリー・パーキンソン(グウィネス・パルトロウ)は元恋人のスカイキャプテンことジョー・サリバン(ジュード・ロウ)と共に事件の調査に乗り出し、マッドサイエンティスト、トーテンコフ博士が企てた地球の危機を伴う「明日の世界計画」へとたどり着く。
全編ブルースクリーンでの撮影、背景のCG映像と合成しているとのことですが、もっとチープな感じかと思っていたけれど、統一された雰囲気のレトロフューチャーな映像は意外と良く出来ていました。物語としてはいかにもアメコミ、使い古されたストーリーですが、この滑稽無糖な懐かしくも楽しい世界は、豪華俳優陣が大真面目に演技していることによって世界の厚みが醸し出されているところがすごい。
ジュード・ロウと言えば一クセも二クセもある役柄が多い俳優さんですが、あの美形が直球ヒーローを演じても様になるものですね。記者魂と女心をうまく表現しているグウィネス・パルトロウもいいけれど、アイパッチに軍服姿のアンジェリーナ・ジョリーも、かっこいい。しかし、一番いい味出しているのは、スカイキャプテンの片腕、天才技師デックス君(ジョヴァンニ・リビシ)でしょう。秘密英国海軍すら動かす最強さ。ジョーと二人のせりふ回しが楽し過ぎます。謎の巨大ロボットを前に「どこから来たのか突き止めたらクリスマスに一つ買ってやる。」って、普段の二人の会話が目に浮かぶようだわ。『ヴァン・ヘルシング』のカールに匹敵するおもしろキャラですよ(笑)。
というわけで、予想以上に楽しめちゃいました。
『SAW』
あの予告を観たら、結末が知りたい! と思うのが人間心理だと思うだけれど、でも怖そう…。意を決してみてみると、いやー、予想以上に良く出来た脚本でした。
古びたバスルームに対角線上に足を鎖でつながれた状態で目を覚ましたゴードンとアダム。ふたりの間には自ら頭をぶちぬいた死体が横たわっている。なぜ彼らはここに連れてこられたのか? テープレコーダーから流れる、犯人からゴードン宛のメッセージは「6時間以内にアダムを殺せ。さもなくば、妻と子供が死ぬ。」
前半で、過去のカットバックがでてきて、犯人は連続殺人犯のジグゾーと推察されていて、犯人を追う刑事がでてくるので、「ん? なら最後に犯人はちゃんと捕まるの?』と、思っていると、いやいや、一筋縄ではいきません。極限状態の人間心理を上手く引き出しいて、最後の方は「ノー!!!」と叫びたくなる感じ。
まさしく低予算映画なのだけれど、無駄がないというか、とにかく脚本の勝利。27歳のオーストラリア出身監督に拍手ですね。
スプラッタというより、現実味のあるエグいシーンがあるので気の弱い方にはお勧めしませんが、発想の転換、エッジの効いたサスペンスドラマをお求めの方にはぜひとも観て頂きたい作品です。
『LOVERS』
『HERO』のチャン・イーモウ監督の下、金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイーらが集う豪華共演作品。
金城武、アンディ・ラウが唐代朝廷の官史を、反乱軍「飛刀門」の指導者の娘と思われる目の不自由な踊り子をチャン・ウィイーが演じ、だまし合いの逃避行が始まる。
とにかく豪華絢爛。静と動を組み合わせたアクションシーンも満載で、観客を飽きさせない展開です。よくも悪くも「スター映画」ではありますが、これだけ美しい映像に仕上がっていればそれだけで見応えがあるというもの。とりわけチャン・ツィイーの「踊り」のシーンは見事ですね。
基本的にラブストーリーが好きな人には受けるかも。個人的には、金城武の魅力がまったく理解できないため(^^;、映像の出来としてやや仕上がりが劣るものの作品としての面白さは断然『HERO』に軍配があがりますが。
『Henry VIII キング・オブ・ファイヤー』
邦題がなにやらすごいんですが(^^;、チューダー王朝の「ヘンリー8世」の生涯をその妻の変遷に焦点をあてて描いたイギリスのTVドラマ。父の死のまぎわに、王の条件は息子の世継ぎをつくり家系を絶やさぬ事だ、と言われたのがトラウマになり、娘しかもたらさなかった長年寄り添った最初の妻をむりやり離婚、一度タブーを破ると、あとはとどまる事を知らず。そしてそれを助長する、ローマ教会と新教徒の対立、権力争い。斬首刑がひんぱんにでてくるので、そいういう映像が嫌いな人は要注意(^^;。2番目の妻アン・ブリンを演じているヘレナ・ボナム=カーターがとても印象的です。
お目当てのショーン・ビーンは、後編のみしかも20分位しかでてこないんですが、修道院破壊で罪なき人々が殺されているのを目の当たりにして、怒りのあまり3万の群衆を率いてロンドン進軍を行う高潔なヨークシャー人であり、優秀な軍人であるという役どころのロバート・アスケを演じています。まあもちろん彼も実際には当時のパワーオブバランスの中に生きていたことに変わりはないのですが、この作品の中では唯一の(^^;善良な人物として描かれている感じ。相変わらず軍人姿が似合っているし、最期はあまりに痛々しいお姿ですが、ファンの方にはおいしいシーン満載といえるかな。
ケイト・ブランシェットの出世作『エリザベス』をご覧になった方は、この作品をみると、歴史がきれいにつながるので、おもしろいと思います。
『女王ファナ』Juana La Loca
大航海時代、スペイン帝国のイザベル女王の次女フアナはハプスブルグ家に嫁ぐ。政略結婚だったが、夫フェリペを深く愛したフアナ。蜜月は続かず夫の不実に狂わんばかりに心をいためるファナの下に追い打ちをかけるように母・イザベル女王の死を告げる使者が・・・。フアナが王位を継ぐが、王位を狙う父、夫と対立するはめに。
歴史ものスキーな方にはとてもおすすめ。豪華な舞台、衣装、それを生かすカメラワーク、と大変雰囲気のある作品です。大画面で観たかった・・・。
フアナ役の女優ピラール・ロペス・デ・アジャラは、狂おしいほどに夫を愛した一人の女性、というピュアなまでに一途な激しさと哀しさを美しく演じきっています。
フェリペ役の俳優ダニエレ・リオッティは、美男王と呼ばれる肖像画からはずいぶんかけはなれた濃いラテン系の顔立ちでちょっとびっくりしてしまいましたが、なかなかかっこよかったですよん。でも、個人的に惹かれるのは、フアナの幼なじみでスペインの若き騎士アルバロ(エロイ・アソリン、「オール・アバウト・マイ・マザー」に出てた人ですね)。ううっ、切ないわ〜。
女王の座を追われそうになり、単独議会に乗り込んで行くフアナのシーンがお気に入りです。フェリペも当時としては普通の振る舞いをしていただけで、フアナの当時の常識から離れたリアクションにちょっと引いてしまい、しかも、権力がらみで若干のせられた感がある、という描かれ方なのですね。死の床でフェリペがフアナに抱かれながら「許してくれ」と言うあたりは、ロマンチックな解釈だなあと。
公式サイトはこちら。
『アンナ・カレーニナ』ANNA KARENINA
アンナ役にソフィー・マルソー、青年将校ヴロンスキ−役にショーン・ビーンを配した1997年版。ロシアロケで、19世紀ロマノフ王朝時代を再現している豪華な映画です。舞踏会のシーンや観劇のシーン、あるいは競馬のシーンなどはただの映像としてだけでもうっとりです。でもって、軍服姿のショーンがこれまたかっこいいんだわ。有名な駅のシーンは完璧な被写体ですよ。つくづく、軍服が似合う男だなあ。
ソフィーのアンナもよく合っていたと思いますよ。黒い衣装が映えるし。
あの長い小説を2時間ドラマに仕立て上げてあるので、物語はあれよあれよという間にすすんでいくわけですが、確かに「社会」とか「階級」とか「生活」とかそういう視点は取っ払って、人間関係の事象だけをつなぐとこういうまとめ方も有りなわけね。小説を読んだ時にはアンナもヴロンスキーもバカだなあという印象しか残らなかったんですが(^^;、映画のまとめ方は役者要素を省いても、現代的視点からみてもわかりやすい、感情移入しやすい描かれ方ですね。
音楽監督はあの指揮者のゲオルグ・ショルティだそうですが、やっぱりチャイコフスキーは「ドラマチック」が似合います。
ともあれ、ショーン・ビーン目当て「だけ」でも十分おつりがくる作品。
p.s.
海外公式サイトでトレイラーがみれます。
『パッション』THE PASSION OF CHRIST
メル・ギブソンの問題作として、海の向こうで物議をかもしていましたが、知識としてのキリスト教という観点からしかとらえる事ができないわたしとしては、単純にARTとしての興味しか湧いてきませんでした。ユダの裏切りから磔の刑までのイエス最後の12時間を描いているのですが、わたしでも知っている有名なイベントが映像で目の前に展開されていく感じ。残虐で「痛い」映画と言われているけれど、確かに劇場で観るのは苦痛だなあと思うけれど、一方で現代人はこういう映像に慣れてしまっていませんか? と言いたい気持ちもちょっぴりあり。
この映画をみて自首した泥棒さん(イタリア人でしたっけ?)とかって、三つ子の魂百までとか刷り込みとかそういう体験があってこそ初めて心に響いてくるものがあるんだろうなあと。やはり宗教とはイコンとそれに対する人の思いの結晶ではと。
まあ、そんなことをつらつら考えているうちに、結局自分のバイブルは『百億の昼と千億の夜』だなあと思ってしまいました(^^;。
『機動警察パトレイバー2 the Movie』
今更ながらにみました。いや〜、これを見逃していたのは我が人生における損失。1も3もみているのに、なぜみていないのだ?>自分。
そもそも、パトレイバー自体はあまり興味がわかなくてOVAやTVシリーズはまったくみておらず、映画三作目『WXIII』をみて「めちゃ暗い話だわ〜」と思い、一作目の『機動警察パトレイバー the Movie』をみて「そうか、押井か」と思い、なぜか二作目はみていなかったという(^^;。多分、レンタルがなかなか空かなくて、予告編からは是が非でも今みなければいけない、とは思わなかったらしく、そのままになっていたんでしょうね。
三作の中では2が一番完成度が高いと思います。
パトレイバーという皮をかぶった押井ばりばり作品。レイバーと呼ばれる二足歩行型巨大ロボットが建設工事その他の産業機械としてあちこちで使用されている近未来の日本を舞台に、レイバー犯罪に対処するための警察組織、警察庁特科車両二課の面々たちの物語、というのがパトレイバーシリーズ(らしい)。しかし、この2で描き出されているのは、実体のない”平和”を憂える人間が演出する、一発のミサイルと情報操作により生み出された架空の”戦時下・東京”。こんなにコンパクトに”日本の平和”を真っ向から描くことに成功している作品が1993年の作品とは驚き。今みると見事なほどに時代の先取りですね。
雪が降りしきる演出は「2.26事件」を彷彿させるものだし、キャラクターたちの物語がそこにあるにもかかわらず、押井作品らしく、あくまで淡白に”世界”が描きだされているところが、好き嫌いが別れてしまうところでしょう。というか、シリーズものとしての楽しさはあんまりないのだと思います。(後藤さん、かっこいい! とか、南雲さんにこんな過去が! とか、もちろん多少のキャラ遊びはあるのだけれど。)あくまで押井監督は「箱」としてパトレイバーという設定世界を使っているだけ、というのが、ひしひしと感じられますからね。
映像は古さを感じさせない程きれいだし、アングルや演出は見事に押井節です。『イノセンス』に出てくるそのまんまの構図、せりふ、もあるので、このあたりも逆照射でみるのもまたおもしろいものです。
この2の後に、あの3があるというのはなんだか妙に納得で、2が作品として完璧に独走してしまったので、3は”単独”といううたい文句とは裏腹に物語といい雰囲気といい2に引きずられてしまったのでは、という気がします。(3は押井がからまなかった分余計に。)
そんなわけで、シリーズものというのがネックになって、みるべき人がみていないというのも十分あるかと思いますので、ここはシリーズ関係なくみてOK、押井作品に興味がある人は必見ということで、今更ですが一押しです。(おそらくいきなり2をみても免疫がある人は十分ついていけるとは思いますが、まあどうせなら映画第一作をみてから第二作の方がよいでしょう(^^;。)
『真珠の耳飾りの少女』The Girl with Pearl Earring
フェルメールの絵そのものの光と影の素晴らしい色彩の映像なので、できれば劇場で観たかったですね。
「真珠の耳飾りの少女」でフェルメールは、どうやってこの少女の幸せそうなそれでいて悲しそうな表情を引き出したのか? というのが小説の着想になったというトレイシー・シルヴァリエの小説を基に、フェルメールをとりまく環境と、彼と使用人の少女の間に生まれる感情を繊細に描き出しています。その時代を見事に再現させているので、まさにその世界に入り込んだ様な錯覚を感じるほど画面全体が生き生きとしています。
スカーレット・ヨハンソンは無垢な中に宿る色気までを体現していたし、フェルメール役のコリン・ファースはまなざしでの演技が光っています。この人「アナザー・カントリー」のトミー・ジャド役の人でしたか。
『チャンピオン 明日へのタイトルマッチ』The Calcium Kid
オーランド・ブルーム主演のスポ魂コメディ。”えびボクサー・オーリィ版”とも言えますが(^^;。
牛乳配達人のジミーは、ジムで練習中に世界チャンピオンとの対戦を控えるプロボクサーを骨折させてしまう。毎日牛乳を飲んでいるため骨が固いジミー=カルシウム・キッドは世界チャンピオン戦に出場するはめに。一夜にして有名人になってしまったジミーは、持ち上げられたかと思うと、誤解され、振り回される。
隣のお兄さん的な好青年役がぴったりのオーリィ。若い頃の作品かと思ったら、2004年なので、「ロード・オブ・ザ・リング」の後に撮った作品ですね*。突然有名になってしまってとまどう役どころ、というのは地のまんまということですね(^^;。とにかくオーリィがかわいい。ファンでなくてもそのちょっと困った顔には、「まったくもー、しょーがないんだから。」と何とかしてあげたくなってしまう様な愛くるしさを感じてしまいます。ストーリーとしてはシンプルそのもの、低予算ムービー丸出しなんですが、ひたすらオーリィの魅力でひっぱります。途中はどーしようもない映画な感じがしていましたが、でも、後半お父さんのせりふとかなかなか良い味を出していました。
とりあえず、オーリィ目当てに観るには十分楽しめます。
それにしても、なぜ邦題はこんなタイトルに? 「カルシムキッド」の方がずーっと良いのに。
*撮影は2002年だそうです。どうりでお肌つやつや〜(笑)。「旅の仲間」公開後、「ブラック・ホーク・ダウン」「ケリー・ザ・ギャング」とかと同時期かな。
『ロスト・イン・トランスレーション』Lost In Translation
ソフィア・コッポラ監督、ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン出演。人生に行き詰まりを感じている中年の男性と若い女性が異国の地で出会いささやかな時間を共有し、やがて別れる物語。
外国人の目に映る異国の地(Tokyo)を好意的に美しく撮った映画で、”異国”で出会ったからこそ心を通わせることができた二人、という設定があって初めて成り立つ物語なので、目の前の映像に”異国感”を感じられない日本人がみてもそれほどおもしろい映画じゃないと思うんですけどねえ。
業界関係者らしくパークハイアットに宿泊しているんですが、写真家らしい旦那と一緒に来ている女性の旅行代金は誰が負担しているんだ、とか、せちがらい事が気になってしまう自分がさみしかったりします。
そうは言っても、総じて好印象なのは音楽の使い方が素晴らしい、に尽きます。東京の映像にこんなにもドリーミングでエレクトロな曲が合うとはね。ケヴィン・シールズの12年ぶりの新曲にどきどきし、ラストのジーザス&メリー・チェインの"Just Like Honey"に酔いました。
『テッセラクト』Tesseract
「一次元は二次元の展開図である
二次元は三次元の展開図である
ならば、三次元は、四次元の展開図(テッセラクト)となる」
オープニングからこんな意味深なテキストがながれて、すごく期待したんですが、その割には、やたらとカットバックとスローモーションを多用した映像、というイメージに終始している感じでした。
原作となっているアレックス・ガーランドの小説が一体どういう展開をしているのかはわかりませんが、少なくとも映像としては細切れにした効果はあまり発揮されていません。もっと、普通に撮って、いくつか重要なところだけ効果的にカットバックなりなんなりした方がよかったんじゃないかなあ。最初の方で断片ばっかりだと、刺激的というより退屈になってしまうんですよ。
ジョナサン・リース・マイヤーズが主人公なのかと思っていたのですが、彼が演じる、バンコクの古びたホテルに滞在するやばい仕事を引き受けたイギリス人青年、ショーンは最初にちょっとでてきてその後実に30分位画面に登場しません。つまり全体の1/3は出てこない、というのもちょっとあてがはずれてしまった感じ。
ホテルのベルボーイとして働くタイ人の少年や彼の友達の生き生きとした表情や、ラストの色トーンや間はなかなかいいなあと思ったので、ちょっともったいない感じでした。