『ウィーン薔薇の騎士物語5 幸福の未亡人』高野史緒 中央口公論新社Cノヴェルス
シリーズ完結編、というよりは一応のピリオド編という感じで、作者あとがきにも機会があればまた書きたいというコメントが寄せられていました。シリーズとしてのお楽しみはこれからという感じだったんですが、いろいろと事情はあるようで、まあしょうがないですね。
今回はオペレッタ「メリィ・ウイドウ」(一般的な訳は「陽気な未亡人」)そのまんまのお話。お金持ちの未亡人には昔の恋人がいて、でも、お互いいじっぱりですれ違い〜というやつですね。物語は一夜の舞踏会で片がついてしまうというスピード編集。
ほとんどクリスタがストーリーを動かしていて、フランツくんは相変わらずぼーっとしているんですが、最後のおいしいところだけはしっかりさらって行くあたりは主役特権ですね(笑)。でも、プロローグのフランツがダニーロと出会うカフェのシーンはお気に入り。なんだか映画のワンシーンみたいで。適度に美形で嫌味のないかわいらしい少年がなにげなく肩をすくめるシーンなんて、想像するだけで楽しかったり。。。
みーはーな私としてはやっぱりこれだけは言いたい。「今回はルドルフ兄ちゃんがちょっとしか登場しなくて寂しい!」
ともあれ、どんな形でもいいから高野史緒が描く「マイヤーリンクの悲劇」ってのは読んでみたいですね。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』J.K.ローリング 静山社
ご存じ世界1億部突破という大ベストセラーシリーズ第3巻。
魔法使い学校の3年生になったハリー・ポッター、アズカバン要塞監獄からの脱走囚人シリウス・ブラックに命を狙われる、の巻き。
喜怒哀楽に満ちた学生生活とヴォルデモートの片腕に狙われる恐怖、とさまざまな要素が入り乱れ、充実した展開。「今明かされる真実」は凝ってますよね。
非常におもしろいのだけれど、いまひとつのめりこめないのは、小道具が到れり尽くせりで、想像の余地があまりない気がするからかもしれません。(対象読者でない私が言うべきことではないんでしょうが。)
あと、ちょっと本筋とは違うところでひっかかってしまうのですね。たとえば、吸魂鬼の使われ方は、いわゆる”善人説”がベースでマグルより残忍な囚人がいないという前提なのかもしれないけれど、感覚的には囚人にこそ効果が薄い気がするし。クィディッチは、道具(箒)の性能で大きく左右される気がするし。確かに同じ箒でも乗る者の技術によって引き出せる性能は違うのだろうけれど、でも高価なものが優位であることは否めないわけで、不公平な感じがするのですが。(フィアボルトを手に入れたのがマルフォイだったら金で優位を買ったと思うだろうし。)もしかしたら1〜2巻でなにか説明があって私が覚えていないだけなのかもしれないけれど。
映画の予告はちらっとみましたが、おもしろそうですね。ちょっと期待してしまいます。