『模型夜想曲』白鳥賢司 (アーティストハウス)
良いにつけ悪いにつけ、紙一重の作品だなあと思う。
偉大なる幻視作家の登場なのか、あるいは単なる香りだけで終わってしまうのか、にわかには決めかねるような。要するに、物語は非常におもしろいし、テイストは好きだけれど絶賛するための決め手に欠けるというのでしょうか。もっと文学的なアプローチができる人ならきちんとしたひも解き方ができるのかなあという気もしますが。(ちなみに解説は作者の恩師である巽孝之氏。)
一見ハードボイルドミステリ風で、「プラネタリウムで投影機ごと容疑者消失」と事件はなにやら新本格風?なのだけれど、物語りが進むにつれて幻想&SF要素が強くなっていく感じ。多分作者の方がバックグラウンドにもっている作家・作品のいくつかは、わたしも好んで読んでいるのだろうということはひしひしと感じられて、逆にそれがバイアスになってしまってわたし自身が直感的にこの物語を単体でとらえられないでいる気がします。
自主制作映画をつくるほど映像への造詣も深い作者らしく、全体的に映像的に脳裏に焼きつくようなシーンが多いです。
実をいうと、この人が作った映像の方が小説以上に見てみたいという気がします。もちろん、映像に落とし込むことが難しいアイディアをもっている方でしょうが。
ともあれ第二作がでれば読んでみたいと思いますね。