2003年9月



『まひるの月を追いかけて』恩田陸 文藝春秋
 それは最初から奇妙な旅だった。義理の兄研吾の恋人から、行方不明の彼を探す旅に一緒に来てほしいと誘われ、新幹線に乗った静。旅の途中で、その連れの女性は研吾の恋人ではなく彼女の親友だということが判明する。この旅の目的は何なのか? 研吾はなぜ連絡をよこさないのか? 過去と向き合いながら各々が答えを求める奈良の旅は続いていく。

 ”恩田陸を続けて読んではいけないの法則”にはまってしまった気がしますが、『蛇行する川』の直後に読むと、なんとなく物足りないというか、この輪郭がはっきりしない世界にひたりにくい感じ。こちらは大人向けに書かれた小説で、そもそもベースとなる色が違うのだけれど、その割には展開の仕方が、「あ、また、ここで死んじゃうのね」と驚きがないのが難でした。もちろん、読んでいる間は結構楽しめるんですが、「ここだ!」というシーンがわたしてきには見つからなかったのかな。この世界に入りにくかったのは、登場人物たちの人間関係が息苦しく感じられるからなんだと思います。本人達すら表面的には自覚しないような抜き差しならない関係を、その歳になるまで続けたあげくに・・・、というのは、うっとおしくてたまらないのです。もっともっと年月重ねて最後まで引きずるくらいならいっそ感嘆するんですが。
 というわけで、自分の懐の狭さを自覚した一冊でした。  

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