机の上で鉛筆を弾ませよう‥図1。 指を水平に構えて、鉛筆をのせる。 鉛筆の先を持ち上げて、落ちるにまかせると、芯の先が机の表面にあたって跳ねかえる。 再び落下しては跳ねかえり、コンコン‥と跳ね続ける。 跳ねて上がる高さはしだいに減っていって、やがて跳ね動作は止まる。 鉛筆は長いほうが動作を見やすい。
子どものころ、学校の運動会や何かにつけて感想文を書く宿題があった。 感想なんてないから書くことも浮かばないまま、空白の原稿用紙のそばで鉛筆をコンコンしたものだった。
さて、鉛筆の跳ね方は、鉛筆のどこを支えるかで変わる。 もし図2のように、鉛筆の端を支えると、ゴツンと鈍い音がして跳ねかえりは1回か2回しか続かない。 鉛筆のまん中あたりを支えると、跳ね動作はどうも頼りない。 うまく跳ね動作を続かせたいなら、まん中と端のあいだのどこかに、支えるのに最良な点がある。 最良点を支えると、軽快なコンコン音とともに跳ね動作が長く続く。 そういう最良点は、どこに定まるか。
関連して、棒で石をたたく場面を想いおこす‥図3。 もし棒の端をにぎって、棒の先で強くたたくと、きつい衝撃が手に伝わる。 その場面を、図4に置きかえた。 棒の先Aに強い力Fを瞬間的にくわえる。 すると力は棒に、図示のように分布した速度を与える。 端Cは、Fと反対の向きに動きだすので、図3では手に衝撃がきた。
さて図4では、力をくわえた瞬間に速度をもたないような点Bがある。 このBに相当する所をにぎっていれば、石をたたいたとき手に衝撃がこない。 こういう話題を本で調べると、長さBCは、ACの3分の1に等しい。 上記の最良点とは、こうして定まるB点のことであった。
図1では、最良点と端のあいだのどこかで鉛筆を支えているとしよう。 跳ねた瞬間に鉛筆は、ある速度で指にむかって押し寄せてくるので、それを指はクッションのように受けてから押しもどす。 このとき運動エネルギーが何がしか失われる。 跳ねるたびに運動エネルギーが失われるので、跳ね上がり動作は減衰していく。 もし最良点を支えていれば、そのようにエネルギーを失うことがないぶん、跳ねる動作が長く続く。
実際上は、もし最良点を支えていても、跳ねる瞬間に指は小さい衝撃を感じる。 それは鉛筆も指も太さをもつことの影響であろう。 影響を避けるには図5のように、鉛筆に糸を結びつけて、糸の端を指に掛ける。 すると確かに、最良点を支えるとき、そしてそのときに限り、指は衝撃を感じないことがよくわかる。
鉛筆がうまく跳ねると、コンコン音は軽快に心地よく響く。 宿題の作文のほうは軽快にいかなかったけれど。 ‥今でも子どもたちの学校では、何かにつけ感想文を書くことを求めるのだろうか。

図1


図2


図3


図4


図5


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