DVDディスクをテーブルの上に置いて、真上から光源で照らす‥図1。 光源は点光源に近いもの、たとえば発光面が小さいLEDがよく、ディスクは記録面を上向きに。 そして斜め上からディスク面を覗きこむように見る。 見る角度*は、テーブル面から40度くらいがよい。
するとディスク面には、図2のように光の帯が現れる。 その光の帯を(写真でなく実物を)じっと見つめると、不思議なことがおきる。 光の帯はディスク面から起きあがって、柱のように直立する。 空間に直立する光の柱、これって何だろう。
DVDには、信号を記録する筋状のトラックが、同心円を描いて刻まれている。 ディスクの半径に沿った断面は図3のようで、トラックは1ミリあたり1300本という密度で並ぶ。 トラックは本当は『らせん』だが、ここでは同心円としても支障がない。
図で、光源からの光Aは、ほぼ平行光になってディスクを照らす。 トラックに当たった光は乱反射して、散るように広がっていく。 場所Bで観察していると、そういう光が各トラックから来るが、どの光も弱い。 けれども、もしもBに来た光の山と山が一致して重なりあったら、光は強まって、見えやすくなるだろう。
では、光が強まる条件は何か。 図3で、隣りあう二つのトラックに着目すると、光がAからBまで走る路の長さに、Δという差がある。 この差Δが、光の波長に等しければよい。 もしそうなら、トラックは等間隔なので、どの光も山がみな一致して重なりあう。 上記で角度*を40度としたのは、この条件に合うからであった。 そして強まった結果が、光の帯になって見えた。
ただし光Aは、波長が一つだけではなく、長めの成分や短めの成分をもつ。 波長が長めなら、強まるためにはΔが大きめ、つまり角度*が小さめが条件に合う。 反対に波長が短めなら、*が大きめが合う。 それで光の帯には色の違いが現れた。
光が強まるためには、もうひとつ追加の条件がある。 図4にて、光源Aからの光が、トラック上の点Pで散らされて、観察点Bに来たとしよう。 このとき点Pを、トラック上ですぐ隣の点P'に移しても、APBの光路長はほとんど変らない、ということを要する (下注)。 この条件のもとでは、もしAPがトラックに垂直なら、PBもまたトラックに垂直になる。
追加条件を、あらためて図5に描いた。 ここでXはディスクの中心軸を表す(Xはディスク中心を通り、ディスク面に垂直。) 光AはPで散らされて、観察点Bへ向かう。 光源AはPの真上としてよいから、APはトラックに垂直。 するとPBもトラックに垂直だから、PBは中心軸Xと交差する。
さて観察は左右の両目でするのなら、その構えは図6のようになる。 ひとつのトラックについて言えば、点Pで散らされた光が左目Lに、点Qで散らされた光が右目Rに来る。 どちらの光も中心軸Xと交差していて、しかもX上の同一点で交差する。 そのように光が交差するのは、どのトラックについても(内寄りのトラックでも外寄りでも)変わらない。 なのでLとRの両目で観察すれば、中心軸Xが線状に光っているかのように見える。
要するに『光の柱』とは、両目に来る光が交差することで生じる見かけの現象であった。 そして交差するのはトラックが円形だからであった。
ついでに、図6のLとRにてカメラでとった画像を、左右に並べよう。
左画像を左目で、右画像を右目で見れば、実物どおりの光景が見える。
―――
(注)もしそうでないと、たとえばPからBに来た光と、P'からBに来た光が互いに打ち消しあうようなことがおきて、光は強まらない。
 

図1



図2



図3



図4



図5



図6

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