梅雨どきから夏、冷たい飲みものをガラスのコップに注ぐと、コップの表面に細かい水滴が付く。 いつもの見なれた光景だが、よく見ると、コップの外側と内側で様子が違う。 コップの内側に、水滴は付かない。
どういうことか確かめよう。 ガラスのコップを冷蔵庫で冷やす。 よく冷えたら、とり出して氷水を注いで、静かに置く‥図1。 すると、コップの外側の面aには細かい水滴が一面に付きはじめる。 水滴の分量はだんだん増えていく。 一方で、内側の面bには水滴が付かない。 ガラスが透き通って見分けにくいなら、外側面の一部を布でそっと拭えば外側と内側の違いがわかる。
ちなみに冷蔵庫で冷やしておくと、水滴が付く範囲aがコップの上のほうまで及ぶので、違いを見やすい。 そしてコップは厚肉ぎみのほうが、状況を見やすいようだ。
梅雨から夏ごろ、空気は温かくて、湿っている(=水蒸気をたくさん含む)。 そういう空気が、つめたいコップ面に近づいて冷やされる。 冷えると、空気は水蒸気をたくさん含むことができなくなるから、水蒸気は液体の水になってコップの表面に付く。 冷えた空気は重い(密度が大きい)ので下へ沈み、そのあとへ温かく湿った空気がくる。 そうして水蒸気が供給されるので、水滴は成長していく。 コップの外側では、こういうことが起きた。
コップの内側ではどうか。 冷えて重くなった空気は、沈んでもコップの内側にある。 はじめ内側にあった空気は、コップの内側にとどまる。 そのさい、よく冷えた空気は、より下へ沈みこむだろう‥図2のa。 上のほうのbには、すこし冷えた空気があるだろう。 内側の空気は、重いものが下にある安定な配置になっていく。 氷水cは空気aを冷却して、安定を維持するように働く。 内側の空気は、どろんと溜まったように動かなくなっていくだろう。
水滴ができるためには、つめたい面にむかって温かい空気が次々と供給される必要があった。 コップの内側では、その要件が満たされないので水滴は付かない。
本当にそうか、確かめよう。 氷水を入れたコップを、こんどは斜めに支えて置く‥図3。 水は、あふれる手前まで注ぎ入れた。 内側の面aで冷やされた空気は、重くなって沈む。 そしてコップのへりbからこぼれ落ちていく。 こういう状況になると、内側面aに水滴が付く。 外側面cを布でそっと拭うと状況が見やすい。
もっと確かめるには、同じコップを二つ、冷凍庫で冷やす。 出したとき霜がつかないように配慮して、たとえば10分くらい冷やす。 二つをとり出して、一つは上向き、もう一つは横向きに置く‥図4。 そして20分かそこら過ぎたら、コップの中を覗いて見比べる。 上向きのほうは、からっぽで何もない。 横向きのほうは、水滴が垂れて小さい水たまりができている‥*。
水滴が付く、付かないがどう決まるか、これで納得できそうだ。 以上、室温28度、むし暑いなかで。


図1




図2




図3




図4


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