パンツのゴムが、きつい。
しめつけが強すぎて体に食いこむ。
くるしくて耐えがたい。
そんなゴムをゆるくするには、さて、どうしたらいいだろう。
ここでパンツとは下着、とくにトランクスのこと。
ウェストのところには、平ゴムがミシンでしっかり縫い付けてある。
その平ゴムが強すぎるのだが、ゆるめたいと思っても、調整なんて不可能。
使う人の事情をまったく無視した作りは、不親切きわまりない。
けれど腹をたてても仕方ないから、自分なりに処置を考えよう。
縫い付けは図1のようで、平ゴム*を4列のミシン縫い目@〜Cで布地に付けてある。
処置をするには、とにかく縫い目をほどくしかない。
といって、縫い目をひとつひとつリッパーで切り開くと何時間もかかるだろう。
考えただけで気が遠くなる。
ところが意外、縫い目は簡単にほどけるのだ。
縫い目の断面は、模式的に図2のように描ける。
斜線部は、布地と平ゴムを重ねた材料で、ゴムが下側。
上糸aは、材料を貫いて下側へU字状に顔を出す。
ひとつのU字に注目すると、そこには下糸が三とおりにからんでいる。
鎖がつながるようにからむb、まっすぐ通りぬけるc、もうひとつは、U字をとり囲んでぐるっとまわる。
実際には、U字の下端は材料の下側にほんの少しだけ顔を出す、というかほとんど出していない。
なので、からんでいる糸はU字のところにしっかり保持されて、容易にずれ動くことはない。
では、縫い目のほどき方。
まず図2にて、*の所で上糸を切断する。
そして図3のように、aとbで上糸をつまみ上げて抜きとり、U字を二つ消滅させる。
U字による保持から解放された下糸のなかから、cの箇所を見つけて、切断する。
切断したら、U字dにつながるほうの端をつまむ。
つまんだら、図4のaのように構えて、矢印へ引く。
すると糸はU字からすぽんと抜ける。
もしbの矢印へ引いたら、U字を通り抜けるさいの摩擦が強くはたらくので、糸は抜けにくい。
つまんだ端をさらにaのほうへもっていくと、構えは図5のようになる。
このときbにあるU字は、もはや糸を保持する働きをしない。
なので糸をaのほうへ引けば、糸はU字からすぽんと抜ける。
抜ける動作がこれで繰り返された。
糸をaへどんどん引いていけば、この繰り返しが進んで、縫い目がどんどんほどけていく。
あれよという間に全周がほどけるだろう。
つまり縫い付けは、必要なら簡単にほどけるようにできていたのだった。
では、いよいよ平ゴムの処置。
まずは図1にて、縫い目のBとCを全周ほどく。
そして平ゴムの、縫い目Bがあったところを、ハサミで切っていく。
ぐるっと全周を切ってしまう。
切り終えると、平ゴムは図6のようになる。
切ったあとがBで、Aは縫い目。
図のように平ゴムは、細いゴム糸が横糸、ふつうの糸が縦糸になって織られている。
切ったあとのBからは、横糸であるゴム糸を取りはずせる。
図中の*のように掻き出すと、ほとんど摩擦を受けずにするするとはずれる。
なのでAとBのあいだにあるゴム糸を、全部はずしてしまう。
これで、ゴム糸があるのは図1にて、縫い目@とAのあいだだけになった。
よってゴムの強さは、元の強さの3分の1になった。
図6にて、AとBのあいだには縦糸だけが残って、刷毛の先のようにふさふさと垂れる。
けれども縫い目Aの押さえがきいているので問題はない。
もし図1にて、@とBのあいだにゴム糸があるようにすれば、ゴムの強さは元の3分の2になる。
それには、縫い目Cをほどいてから、BとCのあいだのC寄りのところをハサミで切ればよい。
ゴムをゆるめる処置としては、元の強さの3分の1、または3分の2、とする二通りがあった。
もし慎重を期すなら、まず3分の2を試し、さらに必要なら3分の1、と段階をふむとよい。
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