茶わんにお茶を注ぐ。底には細かいつぶつぶ状のお茶がらが沈む。
その茶わんのなかを、ぐるぐるかき回す。
それからじっと見ていると、沈んでいるつぶつぶは底の中心にむかって集まっていく。
よく見る光景であろう。
では、もし茶わんをお茶で満たしてから、ふたをしたらどうなるだろうか。
図1では、円筒状の密閉容器のなかに水を満たしてあって、つぶつぶは水に沈むものと、浮くものが入っている。
なかをかき回せないので、かわりに容器をまるごと回転させる。
しばらくすると水は、容器といっしょに回るようになる
(もし容器の底に立って観察すれば水は静止して見えるであろう。)
そうなってから、容器の回転を止めると、つぶつぶはどうなるだろうか。
とくに、浮いたつぶつぶは天井のどこへいくだろうか。
図2では、容器がまるごと回転していて(点線が回転中心軸)、容器の底に立って水を観察している。
斜線をつけた小部分には、回転運動にともなう遠心力 f がはたらく。
しかし小部分は動かないから、まわりの水が小部分を押す力は a よりも b のほうが強くなっていなければならない。
そして差 b − a と、f とがつりあいをなす。
この関係は、どこの小部分についても成りたつから、水の圧力は中心軸から離れるほど大きくなっている。
さて、容器の回転を止めたとすると、その後も慣性で水が回り続けるあいだは図2の状況は変らない。
ただし図3のように、天井に接した小部分については状況がちがう。
天井にくっついた所では水は動かない。
天井から少し離れた所では、水の粘性によって、水が回る動きにブレーキがかかる。
その結果、小部分にはたらく遠心力 f' は小さめに現れる。
上記の差 b − a にくらべると、f' のほうが小さい。
よって小部分は、中心軸のほうへ押されて動く。
こうして天井の付近では中心へ向かう水の流れがおきるので、浮いているつぶつぶは中心へ向かうであろう。
底に沈んでいるつぶつぶは、どうなるか。
図3において、小部分が底に接している場合を考えると、同じこと(遠心力 f' が小さめになること)が言える。
したがって、つぶつぶは中心にむかって集まるであろう。
ところで水には重力がはたらくから、水深とともに水の圧力が大きくなる。
それは上記で考えた差 b − a に影響するだろうか。
図4で、斜線をつけた小部分と、そのすこし下にある別の小部分に着目しよう。
このとき、a よりも a' のほうが大きいが、同じ分だけ、b よりも b' のほうが大きい。
よって差 b − a と、差 b' − a' に違いは生じない。
(小部分のどちらかが天井または底に接してもこのことは変らない。)
結局、ここでは水深にともなう水圧は考えに入れなくてよい。
つぶつぶの動きを、実験で確かめよう。
円筒状の容器を模したガラスびんを水で満たして、図5のように台にのせる。
水には小鳥のエサを入れると、一部は沈み、一部は浮くのでテスト用のつぶつぶになる。
台のシャフトをハンドドリルに取りつけて回転を与える。
回転は十分なあいだ与えてから、止めて、水の動きがおさまるまで待つ。
結果は図6のようになり、浮いているつぶつぶも、沈んでいる(ピントがぼけている)つぶつぶも、中心付近に集まるのが見られた。
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