もしもいま、440Hz の音と、444Hz の音をいっしょに鳴らしたなら、そこには 4Hz のうなりが生じる。 二つの音が重なりあうことで、音の強さが 4Hz の速さで増減をくり返す。 では、もしも 440Hz の音を左の耳に入れ、444Hz の音を右の耳に入れると、どうなるだろう。 二つの音は分離されていて、重なりあうことはないから、うなりは生じない ‥ といえるだろうか。 テスト音源で、ためしてみよう。
まずは音源を次のように用意する。
   440−440    440−444    440−448
たとえば 440-444 は、左スピーカーで 440Hz を、右スピーカーで 444Hz を鳴らす。 クリックして鳴らすと、4Hz のうなりが聞こえるであろう。 二つの音は、空気中で重なりあうので、うなりが生じた。 うなりにともない、音の強さ V は時間 t に対して図1のように脈動する。 もし 440-448 を鳴らせば 8Hz のうなりが聞こえるし、440-440 では当然うなりはない。
次に、イヤホンを接続して、スピーカーは鳴らずにイヤホンだけ鳴るようにする。 そして、たとえば 440-444 を鳴らして聞く。 すると左の耳には 440Hz だけ、右の耳には 444Hz だけが入ってくる。 ‥どうだろう、うなりは聞こえるだろうか。
ここは個人差があるかもしれないが、自分に即したテスト結果では、うなりが聞こえる。 強さの脈動は図2のような印象で、図1の場合に比べると脈動幅が浅いように感じられる。 つまり、すこし弱めのうなりだけれど、確かにうなりがある。 もしも、うなりの有無を判断しにくいようなら、440-440 や 440-448 と比べるとよくわかるだろう。
別の周波数でも、ためしてみよう。
   220−220    220−224    220−228
   880−880    880−884    880−888
周波数 880Hz では、感じとして、うなりが弱い。 さらに
  1760−1760   1760−1764   1760−1768
になると、うなりはほとんど聞こえない。
もしイヤホンの音でうなりが聞こえるのなら、音が耳に入ってから聴覚神経の信号になった後で、 左右の音の重ねあわせが何がしかなされている、と考えるしかない。
我々は左右の耳で音を聞くことでステレオ感を得るが、それには、同じ音が左右の耳に到達した時間の差 (ないし位相差)を検出する必要がある。 ならば、左右の神経信号をどこか一箇所に集めてきて、比較するような処理がなされているであろう。 そういう箇所で、何らかの音の重ねあわせがなされるのであろう。
周波数が高くなれば、そういう信号処理は負荷が増すので追いつかなくなる、と考えるなら、 高い周波数ではうなりが弱くなることにも、まあ納得がいく ‥か。
テスト音源の作成には、ソフトウェア Audacity を用いた。

図1




図2

目次へ戻る