(本文抜粋)
風が吹き抜けドアが開いている。ブラジャーとパンティ、それにストッキングだけとはいえ全裸ではない。腹を痛めて生んだ子に下着姿を見られても、さほど恥ずかしいとは思わない。意識する方がむしろ恥ずかしいことではないか。それでも、思春期の子供というものは、母親の下着姿でも劣情を抱きかねないことは承知している。いたずらに刺激したくはない。
ドアを閉めるか、着替えを早く済ませるかの選択に迫られた。
玲子はとりあえず手元のシースルーのブラウスを手早く着た。
「お母さんどこ?」
トントンと俊が階段を上がってくる音がした。
初めての実力試験があった。上位五十名が廊下に貼り出された。そこに俊の名前があった。それをいち早く知らせたくて、家まで駆け戻ってきたのだった。光和高校の成績優秀者は、全国レベルでもトップクラスなのだ。
「あ、ちょっと、待って」
脱いだジーンズを穿き直しながらドアに向かった。足がもつれた。その拍子にバランスを失って、ベッドにごろんとひっくり返ってしまった。
ドアから俊が顔を出した。
「あの…さあ…」
勢いづいて話そうとした声のトーンが途中で落ちた。
玲子が片脚を高く上げていた。ストッキングの太ももが、さあ見て!とばかりにベッドの上に裏側までさらけ出されている。脱ごうとしていたところなのか、穿こうとしたところなのか、片方の足首にブルージーンズが絡まっている。
目をそらさなければ。そう思うものの、目がくぎ付けになって動かない。見事な太ももに、パンティの最も細くなったところが垣間見えている。
一拍置いて、玲子が起き上がった。息子にでも見せてはならないところを、見せてしまったのだろうか。まさか、見えたかと訊けない。うろたえながら立つのがやっとだった。