感想を書くにあたり、単純にべたほめするのはイヤなので、あら探しのつもりで「巣立ち」をもう一度読み直してみたのですが、悔しいかな、私の見る限りでは欠点が見あたりませんでした。
10歳過ぎても兄弟一緒に入浴する、また その風呂はゴミを燃やしがてら沸かす、というシチュエーションには、現代の日本の(コンビニやカラオケボックスが立地する程度の)都市部を舞台にしていることとの間にギャップがありますが、これはむしろ新鮮に感じられます。
「農村での生活」が、日本人としての(都市部で生まれ育ったとはいえ)私の原風景にあるからなのかな、と思ったりしました。
これまでネット上で出会った作品の多くは、単にHなシーンを描きたいがためになんとなく絡みのシーンを描いてみたものの、話が膨らまずに小説として完成しなかったり、または誰かがセックスして終わり、といった「文の集合体」(文章としてもほとんど成り立ってないモノ)が多く、これだけ満足して読めた物は多くありません。
そういうゴミと貴作品とを比較すると怒られそうですが、珍しく「この先を読みたい」と感じる作品に出会えたことは、大変幸せに思います。


女としてのひとみ、姉としてのひとみが交錯するなか、出て行ってしまう姉との別れが自分で割り切れないうちに突然きてしまった、けれど、それは自分ではどうしようもないというやるせなさと自らの未知の領域である性の目覚めへの恐怖が、うまく表現されていると思いました。


素朴な日常的描写が、他の官能小説の大げさな性描写よりもむしろ官能的で、個人的にはこういう作品を探していました。


非常に良かったです。あまり露骨な表現をされてないのに官能を醸し出されているあたり、さすがだと思いました。
巣立ちの兄弟のなんともいえないエロスは秀逸ですし、ひとみに逢ってみたいと思うほど幻想が膨らむばかりです。
小説というのを忘れるほどすばらしい物でした。私としては最後のエピローグがもう少し長ければ良かったのにと思ってしまいました。

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