私が憂鬱な

その1

 その土曜日は、朝から気分が冴えませんでした。困ったことに、それが今でも続いているのです。
 生理が近づいていたのも事実でしたが、それだけではなかったのです。

 前日、金曜日だというのに残業を遅くまでさせられました。
 さらに悪いことには、終わってやれやれと思ったら、課長に強引に焼き鳥屋に連れて行かれて。
 本人は残業の慰労のつもりなんでしょうけど、こっちはいい迷惑。お酒がちょっと入ると、すぐ脚や胸を触ってくるんです。
 私もきっぱり払い除ければいいのでしょうけど、あからさまに拒否ができないような、巧妙なタッチの仕方でくるんです。
 それに、些細なことで上司とぎくしゃくしたくないし。
 しらふのときはタッチこそしませんが、オフィスで隙さえあれば、スカートの中を覗こうとするんです。
 典型的な、小市民型助平親父、って感じ。
 うっかり床に落ちたものを拾えないし、階段を駆け上がることもできません。
 ミニスカート穿くのは、あんたにパンティを見せるためじゃないんだから。
 そこが分かってないのね。
 セクハラがなくなるのは、一体いつのことかしら。世界中の男って、みんなこんなものなのでしょうか。男性不信に陥りそう。

 ブランチを済ませて熱いシャワーを浴びた後、気分転換に、あまり天気はよくなかったんですが、隣りの町まで散歩することにしました。
 普段着のミニスカートに、袖がほんの少しあるシャツブラウス。
 暑苦しいので、ブラしません。乳首が透けて見えそうですが、それが私には快感なんです。
 ストッキングも穿きませんでした。
 もちろんパンティはちゃんと穿きました。スカートが風で捲れたりすると困りますから。
 でも、部屋の中ではノーパンどころか、全裸で歩き回ることも少なくありません。これは一人住まいの特権かも。
 靴はオープントォーのサンダルにしました。
 紐掛けなので、履いたり脱いだりするのは面倒なのですが、ヒールがあまり高くないので歩きやすいのです。
 隣り町には、いつもきれいに手入れされている広い公園があって、そこは静かに本を読んだりするには、うってつけのところなんです。
 回りには緑豊かな木々も植え込まれていて、強い日差しから大事な肌を守ってくれます。日焼けに弱い私は助かります。
 ハンカチとティッシュ、それに用心のためにナフキンを一枚だけMD用のポーチに入れてアパートを出ました。
 外は意外とさわやかな感じでした。
 柔らかい風に背中を押されながら歩いていると、鬱陶しい世間から、キラキラした世界に分け入って行く、そんな気持ちになれました。


 その2

 公園の奥にある広場に着いて、木陰のベンチに座りました。
 目の前に広がる芝生の上では、小学生の男の子たちがサッカー遊びをしているだけで、ほかに人はいませんでした。
 ヘッドホーンから流れてくるバラードに身を委ねていると、そこへボールが転がってきました。
「すみませーん。投げてくれますかぁー」
 立ち上がって足元のボールを拾い、すぐ投げ返してあげようとしたのですが、ボールに触って気が変わりました。
 手にしたサッカーボールのごっつい野生的な感触に、ぞくっときたのです。
 私も遊びの仲間に入れてもらおうと思い立ちました。
「ぼくたち、何年生?」
 一番年上らしい大きい子に、ボールを持って行って話し掛けました。顔はまだ幼いのですが、上背は小柄な私の肩以上ありました。
「ぼくは六年だけど、ほかは五年生」
「なんで君だけ六年生なの?」
「六年生はみんな進学塾で忙しいんだ。ぼくは公立に行くから関係ないけどさ。だからこいつらの面倒を見てやっているんだ」
「ふーん。みんな大変なんだあ」
 ここら辺は、中流でも上の部類の家庭が多いのです。
 昔と違って、遊ぶにもみんなこぎれいな服装をしていますし、整った顔の美少年といえる子ばかり。見るからに育ちがよさそうでした。
「ねえねえ、ぼくたちぃ。仲間に入れてくれない?」
「えー、だめだよぉ」
「どうして?女だから?」
「そうじゃないけど。そんな靴じゃあ、サッカーは危ないもん」
「そっかあ。じゃ、別の遊びだったら?」
「別の?」
 五人だけのサッカーに飽きていたのか、私の提案にその子は興味が引かれたようでした。
「天下取りって、知ってる?」
「なに、それ?」
「二人向かい合って立ってくれる? もっと離れて。そう、それくらいでいいわ」
「両脚を広げて、脚の間から振り子のように、ボールをこうやって相手に投げるの」
 身振りを交えながら、ルールの説明をしてあげました。みんな目を輝かせて私の言うことを聞いていました。
「分かる? 受ける人は、動いてもいいし、じっとしていてもいいの。でも、相手からボールが離れるまで動いてはだめよ」
 なんだか小学校の先生になったみたいでいい気分でした。
「取り損なったらその人の負け。相手が動かないと取れないようなのを投げたら、投げた人が負け。負けた人は勝った人の後ろに並ぶの」
「そうやって、全員を後ろに並ばせたら、その人は天下取った! ってことで、優勝」
 みんな私の説明をすぐ理解して、早速始めました。


 その3

 私は初めのうちは負けてばかりでした。
 それは普段運動をしていないからだけではなかったんです。
 あまり前屈みになると、シャツブラウスの胸元から中がすっかり見えてしまうのです。
 それが気になって、思いっきりボールを投げられなかったからなんです。
 子供たちも、シャツブラウスの中で私の胸が揺れ弾むのを楽しんでいるのが分かりました。
 徐々に私は見られる悦び、いえ、見せる悦びを密かに感じ始めていました。
(どうせ相手は小学生。気づいていない振りをして、見せつけちゃえ)
 私は勢いよくボールを投げるようになりました。
 そのうちみんな失敗ばかりして、私の後ろに並ぶようになり、すぐ私が天下を取ってしまうようになりました。
 調子に乗って思いっきり投げようと、股の間に深くボールを持った両手を入れたときです。
 後ろに並んでいる男の子の顔が見えました。
「あっ!」
 子供たちが、私のお尻を食い入るように見ているではありませんか。
 慌ててスカートの後ろを抑えたんですが、もう遅すぎました。
 私がボールを投げるたびに、ミニスカートからパンティが丸見えだったのに違いないのです。
 みんなわざと負けて、私の後ろに並んだのです。
「こらっ!」
 そう睨むと、蜘蛛の子を散らすように、わーっと叫んで逃げ出しました。
 逃げたので、反射的に私は彼らを追いました。
 靴が片方脱げてしまった一番小さい子だけが、不運にも私に捕まりました。ほかの子は見えなくなってしまいました。
「スカートの中を覗いていたでしょ!」
 細い腕を掴んで、きつい調子で問い詰めました。
「うん。ごめん」
「どうしてそんなことするの!」
「だって、黒川君がしてたから…」
 そんなことを言っているところに、六年生の子が戻ってきました。
「ごめんなさい。そいつぼくの弟分なんだ。許してあげて」
「あなた、黒川君?」
「あ、はい」
「あなたが最初?私のパンツ見たの」
「え、ええ」
「十年早いんだよ、覗き見なんて」
「十年経てばいいんですか?」
「そういう意味じゃないの! まだチンポの毛も生えてないくせに、女に興味を持つのが生意気だって言ってるの!」
 相手が小学生だと思って、はしたない言葉で罵っていました。
「生えてるもん」
「え?」
「チンチンの毛、生えてるもん」
「うそばっかし。うそつきは泥棒の始まりだよ」
「うそじゃないもん」
「またぁ。じゃあ見せてごらんよ」
「それは…」
「ほらね」
「だれにも言わない?」
「言うわけないじゃない、そんなこと」
「絶対?」
「約束する」
「じゃあ、いいよ、そんなに言うなら見せるさ」
「ふーん。どれどれ」
 ふざけ半分で、その子の半ズボンを脱がす振りをしました。
「あ、ちょっと待って」
「なによ、男のくせに。意気地なし」
「ここじゃあ。あっちの木の裏なら…でもぼくだけ見せるんじゃ、不公平だよ。お姉さんのも見せてくれなければ」
 黒川という子のその言葉に、私はどきんとなってしまいました。
「そ、それは…」
「自分ができもしないことを、人にさせようとするのは、卑怯だっちゅうの」
 口篭もってしまった私に、生意気にも追い討ちを掛けてきました。
(なにが、だっちゅうの、だ!)
 大人の私としては、黙っていられません。
「いいわよ。その代わり、チンチンもちゃんと見せるんだからね!」
「分かったよぉ」
「じゃ、ついてらっしゃい」
 内心どきどきしているのを覚られまいとして、スカートを翻して、さっさと先に立って潅木の植え込みの方へ歩き出しました。
 私が後ろを向いた隙に、二人とも逃げてくれればいいんだけど。
 そう思っていたのですが、捕まえた小さい方の子が声を掛けてきました。
「あのう」
「なんなの!」
 昂奮で声が刺々しくなっていました。
「あのう…ぼく、まだ生えていないんだけど、黒川君と一緒に見てもいい?」
 くりくりした可愛い目で、私を見上げてました。
 この子のおチンチンはどんなんだろうと、興味が湧いてしまいました。
「しょうがない子ねえ。あんたもおチンチン見せるのね?だったらいいわよ」
 ちょっと怒った振りして、一緒に来ることを許してあげました。そしてまたさっさと前を歩きました。


 その4

 公園に人はほとんどいませんでした。
 たとえ遠くにいても、きれいに刈り込まれた植え込みで、私たちの胸から下は見えないはずです。
 その植え込みの裏に回ると、竹箒や草刈り機などの道具が置いてある小屋があるだけで、だれもいません。
 それを確認すると、黒川君はさっさと自分で半ズボンもパンツも脱いでしまいました。まるでこれからお風呂にでも入るかのように。
 黒川君のは確かに、うっすらですが細い毛が生えていました。
 それだけでも驚きだったのですが、大きさもしっかりしていて、びっくり。
 早熟なのでしょう。頭の先は、さすがにまだ皮で覆われていました。
「ね?うそじゃないでしょ?」
「う、うん。まあね」
「今度はお姉さんの番だよ」
「え?見せなければだめ?」
「なんだよ、今更。チェ、これだから女は嫌だよな」
「わ、分かったわよぉ」
 相手は子供とはいえ男です。異性にこんなところで秘所を見せるのは、とっても勇気が要ります。
 ふて腐れるようにして、スカートの中に手を入れ、パンティをお尻から下げました。
 でも脱ぎ取るには、紐掛けのサンダルを脱がなければなりません。
 面倒なので、足首のところまで下ろして、そこで止めてしまいました。
 男の子たちは、半分裏返しになった、透け透けのレースパンティに目を奪われていました。
(どうだ!童貞ども!)
 ちょっぴり大人の女として、得意げな私。
「いい?覚悟はできてるわよね?」
 もったいぶるように訊くと、二人とも生唾を飲み込んでから、こっくんと肯きました。
 スカートの裾を徐々に上に捲くってあげました。
 日の光に滅多に当たったことがない、真っ白な太腿が露わになり、もう男の子たちには私のくさむらもすっかり見えているはずです。
「ほんとだ」
「なにが?」
 感激の声でも発するかと思っていたのに、妙な感想を聞いて訝しく思いました。
「なにが、ほんとなの?」
 パンティはそのままで、スカートを下ろして問いただしました。
「兄さんが言ってた。立っていては、本物のおまんこは見えないんだって」
「おまん…って、あんた、なんて下品な言葉を」
「じゃあ、なんて言えばいいの?」
「それは…えーとー」
 私にも分かりません。
「アレ、とか、ソレ、でいいの! で、黒川君はアレを見たいの?」
「うん」
「見せてあげようか?」
「え!うそ?ほんと?!」
「特別よ。さっき一緒に遊んでくれたし。その前に君も脱ぎなさいよ。約束でしょ?」
「は、はい」
 私に言われて、5年生の子も渋々半ズボンとパンツを脱いで、Tシャツ一枚になりました。
「うふ」
 五年生の子のは、赤ちゃんみたいな形で、可愛い感じでした。
 ちょんちょんとおチンチンの先を、人差し指で跳ね上げてしまいました。
「やめて。やめてください」
「いいじゃない。かわいいんだもの」
 五年生の子は、顔を真っ赤にしてうつむいてしまいました。
「ごめん。そのうち黒川君みたいに大きくなるって」
 私の言葉が、その子の慰めになったかどうかは分かりません。
「じゃあいい? お姉さんの後ろに回って。あんたたちが今まで見たことがないものを、見せてあげるから」
 二人は下半身裸のまま、お尻の方に移動しました。
 パンティが伸び切るまで両脚を開いて立ってから、上半身を折り、両手を膝に置きました。
 お尻が彼らの方に突き出されています。
 このポーズは、部屋の鏡の前で時々することがあるんです。お尻の下に、自分の卑らしいところが見えるから。
「黒川君。スカートを捲ってごらん」
「あ、うん」
 そうは答えたものの、やはり小学生です。大人の女に対しては、同級生のスカート捲りのようにはできないのです。
 それに、私がパンティを穿いていないことを、百も承知しているのですから無理もありません。
 いざとなって、体が固まってしまったようでした。
「早く!」
「あ、はい」
 黒川君は意を決して、裾が背中に乗るほど勢いよく、スカートをぱっと捲りました。
 お尻が丸々外に出てしまいました。
 自分で指図したことなのですが、恥ずかしさで体がかっと熱くなってしまいました。
 お尻の穴も見えてしまっているはずです。
「見える? ここがあなたの見たかったところよ」
 手を両脚の間に入れて、指でその場所を示してあげました。
 折角こんなことまでしてあげているのに、お尻の穴と見間違われるといやだったのです。
「わっ!」
「す、すげぇ」
 初めて見たものに衝撃を受けたのでしょう。声が震えていました。
 小学生に見られていると思うと、じゅくっと潤む感じがしました
「きゃっ!」
 だれかが貝の合わせ目に指を入れてきたんです。飛び上がって、身を起こしてしまいました。
「なにするのよ!」
「すみません」
「だれが触っていいって言った!」
「ほんとにあるのかどうか確かめたくて」
「なにが?」
「穴が」
「ばかねえ」
「ごめんなさい」
「女の人の大事なところなのよ。そんな汚い手で触ったりしちゃだめなの。いい?分かった?」
「はい。じゃ、手を洗ってきます」
 黒川君は半ズボンを穿いて、手を洗いに行こうとしました。水飲み場が五十メートルぐらい先にあるのです。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよぉ」
 下げたパンティを急いで上げながら呼び止めました。
 手を洗ったら触らせてくれるものと、早合点しているのです。
「一緒に行きますか?」
 振り返った黒川君の顔が、あまりにも無邪気に輝いていたものですから、私は言う言葉を失ってしまいました。
 こうなったら、性教育を徹底的にやってあげようか。そんな気になってました。

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