テリー・ギリアム作品 TERRY GILLIAM FILMS |
『未来世紀ブラジル』 BRAZIL 1985
ジョージ・オーエルのディストピア『1984年』を彷彿させる、官僚に支配・統制された社会を舞台に、どこまでが現実でどこからが夢なのか、主人公サムとともに観客も翻弄させられる物語。
タイプライターにはさまれた虫のしみは書類の名前のスペルを変えてしまった。そのため無実の人間がテロリスト容疑で逮捕され死んでしまう。情報局に勤めるサムは人違いに気づくが、官僚組織において「あってはならないミス」は葬り去られなければならない。被害者宅に小切手を届けにいったサムは、そこで繰り返し夢にでてくる女性に出会う。彼女について知りたいがために、一旦断った公安局への異動も受け入れ、情報をたどるが・・・。
悪夢であり喜劇であるディストピアの描写とサムの幻想的な夢の描写が交錯します。追う者と追われる者、捕われの身は何から自由になるというのでしょう・・・。
ラストシーンに流れる「ブラジル」・・・胸をしめつけられます。
今更言うまでもありませんが、フィリップ・K・ディックの世界を彷彿させる映画です。
『フィッシャー・キング』 FISHER KING 1991
現代のおとぎ話。テリー・ギリアム作品の中でも、一番愛着のある作品です。
ジャックは元売れっ子DJ。3年前、ラジオから流れる彼の言葉が刺激となって引き起こされたパブの無差別殺人事件のショックから抜け切れず、ビデオ店を経営する恋人アンの元で失意の日々を送っている。ある夜、浮浪者狩りの不良達に襲われたところを、おかしな男に助けられる。太った妖精の言葉を聞き、神に仕え、聖杯を探求するパリーは、3年前のパブ無差別殺人事件で妻を殺され、強迫症に罹っている男だった。ジャックは彼に対して罪の意識をもち、なにか手助けをしたいと考え、片思いの女性リディアとの仲をとりもとうとする。首尾よくダブルデートに誘い出し、すべてがうまくいきそうにみえたが・・・。
悲劇と喜劇と恋と友情の人生訓話をさらりと描き、時に幻想的なシーンもちりばめ、「人生って捨てたものじゃないよね」って思わせてくれます。それぞれの登場人物が皆愛すべき人達で、パリー役のロビン・ウィリアムはじめ役者の演技もはまっています。
地下鉄の通路の雑踏が、ダンスホールに変わる魔法の瞬間は最高ですね。
『12モンキーズ』 12 MONKEYS 1996
1996年、謎のウイルスによって人類の99%は死滅した。生き残った人類は地下に潜り、科学者グループはウイルス発生の原因をさぐるべく、過去へ”志願”囚人を送りだし調査に当たらせている。そのうちの一人コールは、キーワード「12モンキーズ」と謎の猿のマークを追って過去へと旅立つが、誤って1996年ではなく1990年に送り込まれてしまう。挙動不審な彼は逮捕され精神病患者として強制入院させられる。やがて自分の時代に引き戻されたコールは、再度再々度過去へと送りだされ、やっと目的の1996年に到着する。そこで1990年に出会った精神科医のキャサリンに再会し、強引に彼女に協力を迫り、ウイルス発生地フィラデルフィアへと向かう。二人は街角に「12モンキーズ」と謎の猿のマークを見つけだすが・・・。
『未来世紀ブラジル』の幻惑的な世界を期待するとちょっとはずされますが、あらためて見直すと、大掛かりなセットは迫力があるし、細部は凝っているし、ストーリーは計算されたまとまりがあるんだなあと。
一番受けたのは、目覚めたコールを迎えた科学者たちの「ブルーベリー・ヒル」合唱。「だまされないぞ、あんたらは夢だ」と続くコールの現実喪失感とともに「これぞ、ギリアム!」という感じ。コールに聞こえた「声」も、結局謎のまま終わってしまうのですよね。タイムマシンはどうやって動くのか(過去からどうやって連れ戻すのか)等の設定も気になりますが。
俳優陣は予想以上によかったです。「なんで俺が・・・」「どうしてわかってくれないんだ」というシチュエーションで身体をはって苦労するコール役は、ブルース・ウィルスのはまり役。精神病院入院患者役ブラッド・ピットはそれまでのイメージを一掃するほど真に迫る狂気の演技。理性と目の前にある信じがたいものとのはざまで揺れながら、コールを信じる精神科医キャサリン役のマデリーン・ストウの自然な演技と強さを秘めた美しさも見ごたえがあります。
オープニングに呼応するラストの飛行場のシーンはわかっていてもじーんときます。
その他作品
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
MONTY PYTHON AND HOLY GRAIL 1975(共同監督)
『ジャバーウォッキー』 (モンティ・パイソン番外編) JABBERWOCKY 1976
『バンデットQ』 TIME BANDITS 1981
『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』
MONTY PYTHON'S THE MEANING OF LIFE (共同監督)1983
『バロン』 THE ADVENTURE OF BARON MUNCHAUSEN 1988
『ラスベガスをやっつけろ』 Fear and Loathing in Las Vegas 1999
『ロスト・イン・ラ・マンチャ』 Lost in La Mancha 2001