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盗聴人の独り言 

 商売柄、私は白昼堂々と他人の家に入ることができる。
 玄関先だけではない。台所だろうが寝室だろうが、家人がいても堂々と入れる。今思えばこの役得があればこそ、この稼業を選んだのだと思う。(もちろん卓越した体力もなければならないが)
 ガキの頃から、親の閨を盗み聞きしていたほど、私は根っから盗聴が好きなのだ。趣味を越え生き甲斐ともなっている。
 他人の家のどこでも出入り自由となれば、盗聴器を仕掛けることは雑作もない。問題は録音だ。24時間回しっぱなしにしてもいい結果は出ない。効果的な録音が盗聴の命なのだ。これでも堅気の商売だから、自由になる時間も限られているだけに、そのタイミングを見定めるのが難しい。
 盗聴テープはマーケットに出せば、売れることは売れるのだが、苦労の割には安い。盗撮ビデオなら商売になる。しかしビデオは私の趣味ではない。物音と声だけを聞いて、想像を膨らませるのがいいのだ。断っておくが、盗聴は私の生き甲斐であって、金儲けでしているのではないのだ。
 とにかく、すでに何軒かの家に盗聴機を設置し、それを個人的に愉しんでいる。
 いずれも若夫婦か独身女性。ただし私好みのナイスバディ、若くてキュートな女がいる家だけに仕掛けている。いくら私が物好きでも、ばばあや、ブスの家に配る余裕はない。盗聴機は高いのだ。
 
 苦労して手に入れたコレクションの中で、去年収録したのものをお聞かせしよう。このときはちょっとしたおまけがあったので、私の甘酸っぱい想い出でもあるのだ。
 歳は25前後、OLだ。彼氏は2,3人いるらしい。顔も悪くないが、プロポーションが抜群だ。小柄ながらいい体をしているのだ。昔はこういう女をトランジスターグラマーと呼んだが、今ならさしずめ、マイクロチップグラマーとでも言うのだろうか。一目で、こいつは好き者だ、と直感できた。
 盗聴機を仕掛けた場所や方法は言えない。真似されると困るからだ。
 電話の呼び出し音と同時に、録音を開始した。相手の声は聞こえないから、好きに想像して欲しい。

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