1 ミニスカート
2 ハイヒール
3 ストッキング
4 ブラジャー
5 パンティ
6 セミヌード
7 レッグス
8 フィンガー
9 ヒップ
エピローグ


***** 1 ミニスカート 冒頭部*****

 課長の上野が運転する車の中で、書類鞄を膝に置いた悦子の表情は固かった。
 サイトー製薬に今年入社した者は、不況の影響でわずか二十人。営業総合職は六人、うち四人が女子であった。男女雇用均等がうるさく言われる前から、サイトー製薬では、女子の総合職員が多い。そこには、就職難、特に女子の就職が困難なときだから、選りすぐりの人材を確保できるという会社側の思惑があった。
 特に女子営業総合職員は、いずれも容姿端麗だ。学力も高い。女子社員の中ではエリートとされている。この九月に、悦子はその営業本部特販課に配属された。

「原君、きょうは挨拶だけだから、そんなに緊張することはないよ」
「は、はい」
 お坊ちゃんのような甘い上司の横顔を見ながら答える声が、緊張で震えていた。
 三ヶ月間千葉県の工場で缶詰状態で研修を受けた。負けず嫌いな悦子の成績は常にトップクラスだった。工場研修後、さらに営業本部配属者は、二ヶ月東京の本社で特別講習を受けている。
 特別講習は、二週間の営業実務講習を除くと、半分遊びのようなものだった。
 営業には接待業務が不可欠だ。これは女子営業部員といえども例外ではない。それに備えて、酒の酌の仕方、水割りの作り方から始まり、カラオケ、ゴルフ、麻雀、競馬の手ほどきに実戦訓練、果ては料理屋、ナイトクラブの見学までやらされた。
 商品知識は一応身についたつもりだ。しかし、営業の実践となると、悦子には生まれて初めての経験だけに自信がない。
 ダッシュボードの下から吹き出す冷気が、初めての客先訪問に緊張する悦子をあざ笑うかのように、スカートの裾をひらひらと煽り、ストッキングの膝を舐め回している。腰は冷えているのに、書類鞄を抱える手は汗ばんでいた。


***** 6 セミヌード さわり部*****

 布団の中で悶々として、浩はほとんど一睡もできなかった。悦子がもし友人の姉でなければ、部屋に忍び込んでいるところだ。
 それでも明け方近くになって、うつうつっとまどろんだ。その浩が、部屋の外で人が起きている気配を感じて、ふっと目を覚ました。7時近かった。
 直人が朝帰りをしてきたのだろう。人に待ちぼうけを食わせて、奈緒美とうまいことをしてきたに違いない。そう思うと、嫌味のひとつも言っておきたくなった。
 朝立ちでビキニパンツの真ん中が、隆々と盛り上がっている。その形を直し直し部屋を出た。
 ダイニングにもリビングにも人影はなかった。
 シュシュシュとかすかな音が、バスルームのドアから聞こえてくる。少し開いているドアの隙間から中が窺えた。
 ネグリジェ姿で悦子が、洗面台の鏡に向かって歯を磨いていた。
 引き寄せられるようにして、浩はバスルームに近づき、ドアを開けて入った。
 鏡の中の自分のすぐ横に、男の顔がぬっと現れたときには、口に溜まった歯磨き入りの唾を飲み込んでしまうほど悦子はびっくりした。が、すぐそれが浩と分かると、にっこり笑って会釈した。
「ふぐおわうから、まっへへ」
 すぐ終わるから待ってて、といったつもりだった。浩はおしっこをしにきたと、悦子は思ったのだ。
 風呂場と洗面所とトイレは同室だ。花柄のビニールカーテンで仕切られてはいるが、姉弟でも排便時は互いに譲り合って使っている。
 待たせては悪いと思った悦子は、口の中の歯ブラシを使うスピードを上げた。
 ブルーグレーのナイロンネグリジェと、ほのかに透けて見える見事な体が、小刻みな手の動きに共鳴して揺れている。
 なにか哀しさにも似た微妙な笑顔を浮かべて、浩が悦子の後ろに回った。そしてすっと、重量感のある乳房を両手で掬い取った。
 親友の姉だ。そんな馬鹿なことをしてはいけない。女ならほかにいくらでもいるし、不自由している浩でもなかった。しかし仕方がなかった。明け方で、まだ思考力がはっきり働いていなかったこともある。いや、仮に思考力が正常であっても、窓から差し込む朝陽に浮かび上がる悦子のプロポーションを見せられては、誰しも手を伸ばさざるを得ないだろう。ブラジャーはしていない。腰に小さなパンティだけ。そこまで手に取るように見えるのだ。
 悦子の背中にひたっと寄り添った浩の股間が、くっと盛り上がる悦子のお尻に押し付けられた。
 一瞬身を硬くした悦子は、歯ブラシを右手に持ったまま、左右に体を振って掴まれた乳房を解こうとした。しかし、浩の体と洗面ボールに挟まれて、ほとんど身動きが取れなかった。
 猛烈に暴れ、洗面台のローションの瓶なぞで後ろの男の頭を殴ることもできたかもしれない。しかし悦子はそうはしなかった。相手は弟の友人だ。自分が受けたセクハラの無念を晴らすために、静岡からわざわざ出てきてくれた男だ。手荒くはできなかった。悦子の心の中に、浩を憎からぬ気持ちもあった。
 ネグリジェの上から乳房を揉みしだかれながらも、悦子は不思議と冷静さを保てた。浩が弟と同い年の歳下だという意識があった。さらに処女の聖域を乗り越えている自信が、悦子に備わっていた。
(歯を磨き終わるまで、待ってもらえないかしら)
 そんなことを考えていた。
 悦子がおとなしくしていてくれることを確認すると、浩は悦子を押し付けている体の力を少し抜いた。
 プチプチっとネグリジェのホックが弾き飛ばされた。
 開かれた胸元から浩の手が滑り込み、直に乳房を探り始めた。
 正直なところ、悦子はナイロンの上からの愛撫の方が好みだった。もちろんそれは口に出せることではなかった。
 右手が右の、左手が左の乳房を同時に愛撫した。たっぷりした重さを手のひら全体で受け、カーブに沿わせて撫で上げる。指の股で軽く挟むようにして乳首が摘ままれると、こりこりと硬くなっていくのが、悦子自身にも分かった。
 浩にそうされている間の心境は、悦子にも分からなかった。完全にネグリジェの前を開け放たれ、後ろから差し入れられた男の手が、自分の乳房の上で蠢いている。それが鏡の中にはっきりと映し出されている。それを眺めながら、平然と歯磨きを続け始めた。

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