先日、ふらりと一通の手紙が、私の仕事場に舞い込んだ。
角封筒の裏に差出人の住所はなく、名前だけが記されていた。が、その女名に心当たりはあった。過去に何度かメール交換をしたことがある、私の読者の一人だった。
しっかり糊付けされた封書を開けるなり、のっけから私は衝撃を受けた。
小説は仮構の世界である。それが現実の世界と、見事に交錯してしまっていたのだ。
内容は捏造された(創作的な)ものであり、差出人も女を装っている男性である可能性も否定できないが、封筒の表書き、便箋の字体、いずれも女性の手であることは明白である。
また、文章表現は稚拙だが、それだけに生々しく読む者に迫る。
こうして考えると、記述されていることはすべて真実と思う方が自然であろう。
差出人は読後破棄するように言っているが、読者の判断を仰ぐため、敢えてここに公表することにした。
また、この衝撃的な手紙を、私一人の記憶にとどめておくには、あまりにも惜しいと思ったからである。