【葛西金町富士】かさいかなまちふじ 2万5千分1地形図(草加・松戸)
○久しぶりに低山探訪の旅に出ます。東京には富士塚が多く残っていますが、その中には普段は登山禁止のものがあります。ところがその多くが山開きの日には入山が解禁になるようです。今年の7月1日は日曜日なので普通のサラリーマンでも参加できます。来年には晴れてサンデー毎日の身分ですが、忙しい時に行ってこそ登り甲斐のあるというものです。
○天気は午後から下り坂との予報でしたので、欲張らずに常磐線沿線に固まっている5山と池袋の富士山を狙います(十分欲張っていますが)まずは金町で降りて江戸川の右岸にある葛西神社を目指します。予めポケナビに入力してきたので紙の地図は不要です。徒歩モードなので狭い路地も音声ガイドですいすいと通過いたします。
○葛西神社の大きな境内は綺麗に掃き清められ、近隣の老人が2人だけ参拝している静かな佇まいです。真ん中に厄除けの茅の輪が設置してあるので、きっとお山開きを祝っているのでしょう。輪の潜り方が図解してありますので、それに従って無限大を描きながら3回まわります。
○ここの冨士塚は何時でも登れるようですから、山開きだからといって混雑するわけではありません。富士塚はどこかな?広い境内には他の構造物もありなかなか発見できません。ようやく本殿の右奥に、樹木に囲まれてひっそりと聳え立っているのを見つけました。
○山麓で箒を使っているお坊さんに挨拶してから山頂を目指します。一帯は清涼な空気が漂い、聖域という気配が濃厚です。高さは3mほどの小ぶりな塚ですが、道はしっかりしていて登り易い富士山でした。山頂からは木々の間から江戸川の土手が望まれ、長閑な雰囲気が木漏れ日とともに伝わってきます。隊長はしばし佇み、静かに汗をぬぐいます。
【飯塚富士】いいづかふじ 2万5千分1地形図(草加・松戸)
○次の飯塚富士は西に2.5Kmほど行った中川の左岸にあります。曇っているので日差しは強くないのですが、湿度が高いので歩くと汗が止まりません。団地を過ると前方にこんもりとした森が見えてきます。どうやらあれが目指す飯塚富士のようです。手前にテントが張ってあり、講の人々がお山開きの準備をしています。
○富士塚の周りには柵があり入口の門は開いていますが、どうも勝手に登れる雰囲気ではありません。でもここまで来て敗退は無いでしょう。富士講のテントにいる人の良さそうなおじいさんに「こんにちは、富士山に登れますか?」「一応禁止だけれど」「えー、お山開きには登れるって聞いて来たんだけど」「じゃあ、まだみんな集まる前だから一緒に行きましょう」という訳で何とかお情けで登頂を果たします。
○まず飯塚富士はその大きさに驚かされます。最後の方の急登や鳥居も本物の富士山そのものです。頂上からは中川の川面が覗かれ、頬に爽やかな風を感じます。今は樹木に囲まれていますが、出来た当初は本物の富士山が眺められたのでしょう。本当はもっと古を偲びたいのですが、感慨に耽っている時間はありません。特別扱いのお礼を述べつつ富士塚を後にいたします。
○近くに循環バスの停留所があったのでバスで金町駅に戻ります。アイリスループと呼ばれる小型のコミュニティバスですが、老人主体に途中から満員となる人気の路線でした。冷房が利いて気持ちの良いひと時を過ごします。何といっても普段は登れない富士塚をゲットできた幸運に、隊長のテンションは高まりっぱなしです。
【綾瀬富士】あやせふじ 2万5千分1地形図(草加)
○JRで綾瀬まで2駅戻ります。駅を降りるとパラパラと雨が降ってきました。天気予報よりちょっと早めの悪化です。綾瀬稲荷神社は駅から近いので、傘をささないでも何とかなるでしょう。ものの本によると『普段は低い鉄柵に囲まれていて登れません。7月1日には一時的に門を開け、お山開きの儀式が執り行われますが、登れる保証はありません』とのこと。とにかく行って見ましょう。
○観音寺の塀を回り込むと神社の鳥居が迎えてくれます。富士塚は入ってすぐの左手前にあり、外からも良く見えます。高さは中ぐらいでしょうか。溶岩を張り付けた山容は怪異ですが、富士山らしさを強調しています。周囲には誰も居ませんが、幸い扉は開いていました。まずは山頂を極めましょう。ゴツゴツした溶岩が道にはみ出て歩き難いので慎重に足を運びます。
○道路側には松の木が植えられていますが、本殿を向いた正面には何もないので展望は良好です。ただ北隣には3階建てが建っているので圧迫感があります。静かな頂上を堪能したら下山ですが、歩き難いのでより慎重に下ります。本堂には富士講の幟が飾られお山開きの雰囲気は濃厚でしたが、人の姿が見当たらないのは少々寂しいところです。困難な頂を極めて大満足の隊長は、小雨にもめげず鼻歌交じりに駅に戻ります。