【大川富士】おおかわふじ 2万5千分1地形図(東京首都)
○荒川を渡ると千住の街並みとなります。昔はここから江戸でした。宿場町の面影を残す街には歴史的な遺構が多くあり、富士塚もそのひとつです。まずは手始めに荒川沿いにある氷川神社を目指し、北千住駅から賑わう商店街を西進します。
○実は隊長の社会人スタートは北千住でした。駅前は再開発されて面影があまり残っていませんが、日光街道を越えると懐かしい建物に出会います。ただ交差点の角にあった三井銀行や山一証券の看板は変わりましたし、隊長の通ったビルも売却され名称が変わっていました。それでも変わらないものもあります。昼休みに良く通った喫茶店の「クローネ」は昔のままの佇まいでした(ああ、懐かしいなぁ)
○日光街道を越えてから北上します。昔ながらの街並みはタイムスリップしたような気持ちにさせられます。曲がりくねった路地を通ると、大きな松林に囲まれた氷川神社に着きました。参道を進むと右手に千住七福神の布袋様が祭られています。目指す大川富士は本堂の左奥にありました。周囲は広場になっているので解放感はありますが、そこにお山開きのテントや屋台が置かれていますので、富士塚の写真は撮りにくい状況です。
○富士塚は3mと小ぶりで傾斜もきつくありません。登山道が何本もあり繋がっていますから色々なルート取りができます。誰も登っていないので遠慮がちに取り付きましたが、登り始めたら縦横無人に歩き回ります。とても歩いやすい登山道でした。これならお年寄でも何とか登れるでしょう。山頂には古い標石が載りなかなか見ごたえのある面構えでした。
【宮元町富士】みやもとちょうふじ 2万5千分1地形図(東京首都)
○荒川土手の氷川神社から南下して、隅田川に近い千住神社に向かいます。千住宮元町の辺りは古い小さな家が多く道が入り組んでいます。ナビに導かれるまま幅1mに満たない路地を通って神社に近づいて行きます(まったくこのナビには驚かされます)神社の入り口からは長い参道が一直線に本堂に通じ、まるで稲荷のように多くの鳥居が連なります。本堂の手前には茅の輪が設置されています。
○こちらの宮元町富士もお山開きの日だけ解禁となる富士塚です。いくつもの鳥居を潜りながら参道を奥に進むと、形の良い中規模の富士塚が右手に聳えています。溶岩で固められた富士山は、急な傾斜の登山道で隊長を山頂へと誘います。付近には誰もいませんが一気に山頂を目指します。無酸素登頂のために起きた高度障害でしょうか、クラクラする頭を振りながら狭い頂に立ちました(単なるシャリバテとの説もある)
○さて下山しようと足元を見ると、裏手に急な道が続いているじゃありませんか。登山家の矜持として、同じ道を引き返すのも芸がありません。あまりに危険な道に一瞬は躊躇しましたが、思い切って一歩を踏み出します。両手で溶岩を掴みつつ、三点確保を心掛けながら慎重に下ります。何とか無事に下界に降り立ち、緊張の一瞬は過ぎました。
○本堂で参拝して帰りに富士塚の前を通り掛かると、ちょうど女性の単独行が登って行くところでした。流石にスカートでは下山で苦労されているようです。下山後に再び富士塚に向かって手を合わせ参拝する姿を見るにつけ、宗教を越えて素朴な尊敬の念が湧きあがります。
○それにしても本日しか登れないというのに人気がありませんでした。ただ講堂の前に椅子が並べられていましたから、お山開きの儀式はこれからなのかも知れません。これで何とか無事に千住近辺の富士を2座ゲットいたしました。次は池袋ですが空模様は一触即発ですので先を急ぎましょう。
【池袋富士】いけぶくろふじ 2万5千分1地形図(東京西部)
○東武東上線の下板橋で下車し、シャッターの下りた商店街を南下します。どんよりとした空から微かに水滴が落ちてきますから、何とか持ってくれと祈りながら足を速めます。住宅街を進むと前方にこんもりとした森が現われます。左折して氷川神社の入り口を目指しますが、沢山の自転車が道脇に駐輪していて、人々のざわめきが聞こえます。
○ここ池袋富士もお山開きのみ解放されます。これまで寄った富士塚とは違って、近隣から大勢の人が集まり大賑わいでした。境内の真ん中には茅の輪がありますが、足元の覚束ないおばあさんが居て渋滞を起こしています。正しい回り方はこれこれだと示し、どうしても3周するといって聞きません(まぁ、歳を取ると頑固になりますね)
○富士塚は本殿の左手にありました。幟を立てた鉄柵の正面扉は開かれています。入口の前には順番を待つ人の列が出来ています。奥の方を覗くと溶岩で出来た塚にはジグを切って登山道が刻まれ、多くの参詣者が列を作って登っています(まるで本物の富士山みたい)途中では白装束に袴の先達が交通整理をしています。山頂付近は狭くて急なので入れ替わりで人を送りこみます。こんな所で順番待ちの渋滞とは、思っても見ませんでした。
○武骨な溶岩の富士塚を彩るのは、紫色のみずみずしい朝顔の花です。あさがお市の鉢植えが山腹に飾られていて、参詣者の心を和ませてくれます。ようやく辿りついた山頂はコンクリートで固めてあり、数人が留まれる広さがありました。参拝がすんだら入れ替わりながら下ります。次から次へと登山者は引きもきれません。本日の最後を飾るに相応しい賑わいの富士山でした。
○本日は富士山の山開きということで、日頃は立入禁止の富士塚にも登ることができました(巡ってきた6山のうち4ヵ所は本日限定の頂でした)危機一髪のところもあったものの、首尾よく計画を達成できたことは幸いでした。お天気の方も最後まで何とか持ちこたえ、隊長の悪運の強さは相変わらずです。久しぶりの低山巡礼でしたが、深い満足感を与えてくれました。