「その呪いを解くのは愛ーーー」
ちらしや前売に印刷されているキャッチコピーですが、観終わって振返るとかなり「?」ですよね。
ウィルとエリザベスの恋愛物ってのを押し出して、カップル客ゲットだぜ、という意図だったんでしょうか。まあ、宣伝なるもの、正確な内容よりイメージを売ればいいんでしょうけど。でも、エリザベスってメダル持ってただけで、呪いを解くことに関しては無関係なんですよね。呪われた海賊達にしてみれば、「愛はいらん、血をくれ」って感じだし。
「あなたの為に私は戦う」ってのも、固有名詞は必ずしも一組ではないところが物議をかもしているとか、いないとか。
ともあれ、「2003年夏・全世界激震ー!」ってのには、激しく納得ですね〜。なにしろわたしまでこんなページ作っちゃってるくらいですから(爆)。 |
ジョニー・ディップの若い頃と言えば、初主演『シザー・ハンズ』(1990)の印象が鮮烈ですが、映画デビューは『エルム街の悪夢』(1984)でフレディに殺される役で、とっぽいにーちゃんって感じでした。
ノリントン役のジャック・ダヴェンポートは1973年生まれで、実は結構若い。(ちなみにウィル役のオーランド・ブルームは1977年生。)そのためサプライズな過去はなくて、思い出せるのは『クロコダイルの涙』(1998)の、ジュード・ロウが演じる現代の吸血鬼を追う若くてしつこいロッシュ刑事役、あるいは『リプリー』で、マット・デイモン演じるリプリーに優しくしてあげた挙げ句に殺されちゃうピーター役(1999)くらい。映画初主演は『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1996)の端役だったようです。
「全然気が付きませんでした」のびっくり俳優さんは、エリザベスの父親のスワン総督を演じているジョナサン・プライス。彼は、あのテリー・ギリアム監督の出世作『未来世紀ブラジル』(1985)の主人公サム・ラウリ役の人なんですね。18年の歳月を経て面影は・・・はっきり言ってほとんどありません(^^;。かろうじてあのどんぐりお目めくらいでしょうか。しかし、思い起こすと『未来世紀ブラジル』のサムとハリー(ロバート・デ・ニーロ)の関係というのは、さしずめウィルとジャックみたいなものですね。(はっ、てことは、ラストのハッピーエンディングはウィルの白昼○か・・・がーん。)
ちなみに『未来世紀ブラジル』はようやっと国内DVD発売(11月予定)が決まったようです。今は昔の若かりしジョナサン・プライスの姿と、今となってもまったく古びない映像、テリー・ギリアム・マジックを楽しんでみてはいかがでしょう。 |
「右手に剣、左手にピストル」
なので、利腕だけの訓練ではダメなんですね。ジャックとウィルが鍛冶屋で剣を交えるシーンでは、途中から鍛冶屋の道具を持って両手で戦っていますが、バルボッサもジャックもピストルを撃つシーンは全て左手で撃ってますし(ジャックが鍛冶屋でウィルをおどす時には右手でもってますが)、「エリザベスを放せ」と要求する時のウィルも左手でピストルを持って、右手でロックをはずしています。(片手ではできなかったのね)
当時、剣は、狭い甲板で戦うのに適している刀身が短く幅が広いカトラスがよく使われていたそうです。先が反った剣を海賊が持っている絵をみかけますが、映画で使われている剣はそれほど反っているという感じではないですね。(ちなみにジャックの剣は1750年代に使われていた本物の剣。)
ピストルはフリントロック式ピストルが17世紀から19世紀の主流 ですが、潮風で火薬が湿ると発射しないとか、装薬するのに時間がかかるとか、現代の「ピストル」のイメージとはずいぶん異なります。台尻が棍棒として使えるようになっている、というあたり、その武器の実用度を物語っています。もちろん、ピストルは派手な破壊力があるので権威の象徴でもありますが。当然のことならが、きちんと整備していないと使えないわけで、ジャックが持っている弾丸が1発だけというのは置くとして、火薬は予備も持ち歩いていないといざという時使えないのでは? 最後にバルボッサを撃つ前には、ドーントレス号でちゃんと整備しておいたんだと思いますが(^^;。
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映画の冒頭、ポートロイヤルの船着き場で船の停泊料として1シリングを要求されたジャックが3シリングで役人を買収するシーンがありますが、さて、1シリングとは一体どれくらいの価値なのか?
映画の作り手は時代背景について、特定の年代ではないが1720-1750年の雰囲気に特に注意したということなので、とりあえず17世紀中盤にスポットを当ててみます。
EH.Netが提供する過去の貨幣購買力サーチサイト*1で、1シリングの1750年前後の購買力を現在の価値に換算すると、約5ポンド=1000円弱になります。生活水準の差があるので、ちょっとピンと来ませんね。
当時の英国海軍の水夫の1か月の賃金をみると*2、一般水夫が19シリング、有能水夫で1ポンド4シリング。ロンドンの未熟練労働者が週9シリングの時代になっても、この待遇は1653年から1797年まで実に150年間も変わらなかったというから驚きですが、商船の水夫はこれよりいくらか高かったようですし(1762年の東インド会社の水夫の月給は1ポンド15シリング)、戦時には2ー3倍にはね上がることもあったとか。
1750年のロンドンの物価*3をみてみると、1シリングで買えるものは、ビール3/4ガロン(約3.4リットル)、ステーキハウスのディナー(ステーキ、パン、ビール、チップ)1回、パンとチーズとビールの質素な夕食4回。また、英国陸軍に志願したときのボーナス手当てとして、1シリングが支払われていました。
あの役人が2シリングくすねるつもりだったのか、3シリングまるまる頂くつもりだったのかはわかりませんが、まあ、ちょっとしたポケットマネーにはなりそうです。
ところで、ジャックが頂いた小銭入れにはさていくら入っていたんでしょうね?
(12ペンス= 1シリング、20シリング=1ポンド)
*1"How Much Is That Worh Today?" Comparing power of money in the Great Britain from 1264 to 2002.
金額と年代を入れると、2002年の価値になおしてくれる便利なツール。
*2「フォーラム船員史」の「帆船の社会史」に詳しいです。
*3"The Cost of Living, London, mid 1700s"
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製作のどの段階のものかはわかりませんが、最終稿になる前の脚本をこちらで読むことができます。大筋としては変わらないのですが、キャラクターの立ち方が異なりますし、後半の展開の仕方もずいぶん違います。ノベライゼーション(『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』竹書房文庫)にでてくるものもありますが、個人的におもしろいなあと思った異なる点をあげてみます。
ただし、事前にご注意申し上げますが、この脚本が本当に存在したものかどうか保証はありませんし、そもそも没になった時点で、ここに書かれた設定は全て捨てられたと考えるのが妥当である、という点にはくれぐれご留意ください。要するに、これが裏設定ですよー、という資料ではない、ということです。
○バルボッサが語る呪いの由来
バルボッサが棚から鍵のかかった木の箱を取り出し、中に入っていたマヤ語の古写本数ページと、マヤ象形文字が刻まれた木の皮数片をエリザベスに見せながら話します。
コルテスに金貨を差出し、裏切られ死のまぎわに呪いをかけた者として一人の高僧が出てきます。スペインに向かった宝を積んだ船は何らかの災難に見舞われ、一人を除いて乗員は全員死亡。生き残った者も上陸し金貨を隠すまでの命だった。長い年月の間に、呪いの魔力によってその場所は呪われた島になった。それが死の島、Isla de Muertaだ。
というわけで、映画より丁寧に語られていますが、なんとなくありがちな秘宝冒険物のにおいがぷんぷんしてきますね(^^;。
○ジャックが語るブーツストラップビル
インターセプター号の上で、ジャックがウィルに語るシーンで、彼を形容する言葉は「彼のように賢くて手先が器用な奴を他にみたことがない。牢の鍵を上手くはずしてくれた時のお前は、まるで双子のようだった。」ノベライゼーションと同じく、グラスゴーで家族に話すこととは違う方法でお金を稼いていた父親はお前の父さんだけじゃない、というせりふが続きます。
グラスゴーは御存じの通りスコットランドにありますが、ジャックが"bonny lass"(「牢から出してくれれば(ウィルを)愛しい人のところに連れて行ってやる」というシーンで出てきます)という言い方を覚えたのはブーツストラップビルからなのかな? とか妄想が膨らむわけですねー。
○トルトゥーガ
アナマリアは酒場のウエイトレスとして登場。ジャックは、赤毛の女、中国人の女、アナマリア、と3回ひっぱたかれます。
ジャックとギブスの会話の中では、ジャックの船のクルーを集めるのは大変だ、という話がでてきます。ジャックは”ジンクス”とみられているから一緒に航海したがらないと。
やっと集めたクルーの前でジャックは「死の島に行って、スワン総督の娘を助ける」という航海の目的を告げ、怖じ気付くクルーは逃げ出すがままにして、クルーをふるいにかけます。
○ジャックの過去について
海亀の話はありません。ウィルがギブスにピストルの話をきかせてくれとせがむと、「ジャック・スパロウは正直なところがあって、それが全ての問題の発端だった。」と話しはじめます。その中でジャックは昔イングランドで地図制作者(cartographer)だった、とのこと。ジャックは船員に平等の分け前を約束し、航海が始まって40日後に、第一航海士がすべてが平等なら島の場所も平等に教えろ、と言ってジャックが教え、その夜反乱が起きたことになっています。
ウィルがジャックにどうやって島を抜け出したのか尋ねると、ジャックは「俺の身体は今も島に腐って横たわっている。ここにいるのは幽霊だ。」と答えています。
この幽霊ジョークは結構いかしていると思うんですが、でも海亀の話の方がおもしろいですね。
ジャックの過去については、反乱を起こした奴は確かに悪いが、起こされた方も大甘だったんじゃないか、ということを裏付けるような・・・。悪名高きジャック・スパロウ、という評判は、孤島から脱出してからのものなんでしょうね。
○死の島の洞窟で
ウィルはジャックをオールで殴らず、三人で逃げだすが、途中でジャックが自分が海賊の足留めをするからといって二人を逃がします。海賊達が追い付くとジャックは「パーレイ」を主張し、バルボッサと呪いを解くために必要な人を教える代わりにブラックパール号をくれと交渉。バルボッサは心が動いた様子だが、その計画を実行するためにはメダルが必要だ、と言われてジャックははじめてエリザベスがメダルをもって逃げたことに気付く。
○インターセプター号とブラックパール号の戦い
エリザベスの戦闘シーンはなし。圧倒的にブラックパール号が強い。
海賊旗が掲げられると、何が何でも抵抗しようとするウィルをギブスが「あの旗の意味は、抵抗するとただの死ではなく拷問を与えられる」という意味だから、エリザベスのことを考えれば状況を悪化させるぞと諌めます。
ブラックパール号に連れて行かれ、エリザベスが海賊たちに囲まれると、ウィルが隙をみてピストルをつかんで「彼女を放せ」と、映画と同じシーンにつながる。
「他に条件は?」ときかれて、ウィルは「ジャックとクルー」と答えているのは、洞窟で逃がしてくれたジャックを信頼しているからなんでしょうが、いくらウィルが世間知らずでもこの状況で「聖書にかけて誓え」とは言わないような。
○ノリントン
エリザベス(とジャック)を孤島から救ったノリントンは、エリザベスのウィルを助けてほしいという願いをきいて、助けることには同意しますが、その後プロポーズを取り下げてしまいます。
ノリントン、お人好し過ぎ。
○海賊が語るブーツストラップビル
ブラックパール号で反乱が起きた後に一行に加わっていることになっています。最後にみたときには、顔を上に向け海の底に沈んで行ったということで、大砲につないだまま大砲ごと投げ落としたということのようです。
これだと、ブラックパール号の反乱の時にブーツストラップビルが何をしていたのか? という疑問が晴れるんですよね。このせりふは残してほしかったな〜。
○再び死の島の洞窟
ウィルは途中でつまずいたふりをして、峡谷に身を躍らせて逃げだし、ジャックと再会。ジャックについていくと宝の置いてある場所に着く。ウィルが不安になると、「ジャック・スパロウ、礼を言うよ(Thank you, Jack Sparrow)」とバルボッサが後ろにいる。バルボッサはジャックに裏切られたと心底怒っているウィルをみて、外に英国艦隊がいるというジャックの話を信じる。
金貨の呪いは後から盗ったジャックの分は別扱いということになっているようで、ジャックが金貨をウィルに投げるシーンはなく、ウィルの分だけでバルボッサが死に、後からジャックが自分の分を血をかけて返すと、櫃のふたがひとりでに閉まる。
エリザベスはブラックパール号に単身のりこんでクルーを助けているので、このシーンには登場しません。まるで二人の世界というべきか(^^;。エリザベスは呪いが解ける瞬間にも立ち会えず、まったくもって呪いとは無関係に。。。
○エリザベスとの再会
ジャック、ウィル、ノリントンの3人が浜辺にいると、エリザベスが「無事だったのね!」と叫びながら近寄ってくる。3人とも振り向いて「誰のことだ?」という顔をするが、エリザベスはまっすぐウィルのところへ。
エリザベスの方が積極的なんですね。ここだけウィルって主人公だったわ、と思わせる場面。
○ラスト
ウィルの裁判の判決は縛り首だが、エリザベスのために提督が恩赦を与える。その間にジャックと仲間が逃げ出すが、牢の鍵をあけてやったのは実はノリントン。ブラックパール号登場。映画と同じラスト。
これだと再度ノリントンのキャラがぼけますね。あんた、ほんとに軍人か? みたいな。
こうして比べてみると、映画と比べて全体に饒舌ですし、展開もありがちな秘宝冒険物っぽい感じです。特に金貨を入れた箱の蓋がひとりでに閉まるってのはダメダメです。そーいうあからさまな超常現象みたいなところをばっさり削ってしまって、シンプルにしたところが呪いといっても意外と嘘っぽくなく受け入れられるところでしょうか。
映画で、死の島の洞窟でウィルがジャックを殴るところで、いっつも「まったく、ウィルったら!」と頭でわかってても感情が許さない理不尽な思いに駆られるんですが(笑)、お話としてはここで登場人物間に緊張感が出てくるので、明らかに映画の展開の方が説得力がありおもしろいです。
登場人物の性格設定、行動パターンも紆余曲折の末、固まったんだなあというのがよくわかります。(キャラ燃えを別にしても)何度観ても飽きのこない映画なので、かなりテンポのよい、展開が上手い脚本だなあと思っていたのですが、やっぱりそうとう練って練って作られているんですね。
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海賊旗はJolly Rodgerと呼ばれ、黒字に白でドクロとその下に骨で×が描かれているのが一般的ですが、中には独自の旗を掲げていた海賊もいたそうです。* 海賊はどこかの国の旗を掲げ通商船を装い、いざ獲物の船や街に襲い掛かるときに、海賊旗を掲げるわけです。
旗といえば、ノリントンの昇進式**はじめ、映画の中で目立っているのが英国旗、いわゆるUnion Jack。ただし、現在のユニオンジャックとはちょっと違っていて、斜め線に赤が入っていません。ユニオンジャックは1603年、イングランドの聖ジョージ十字旗/St. George Cross(白地に赤十字)と、スコットランドの聖アンドリュー十字旗/St. Andrew Cross(青地に白の斜十字)が組み合わされ、映画ででてくるデザインになり、1801年にアイルランドの聖パトリック十字旗/St. Patrick Cross(白地に赤斜十字)が加えられるまでは現在のデザインではありません。青地で左上にユニオンジャックがあるのは、海軍旗です。
ジャックが冒頭に乗っている小船に掲げられている三角旗は、ポール側から白、赤、青で、もっともらしい色遣いのトリコロールなんですが、あれはどこの旗なんでしょうね。ちなみに、フランスの革命軍の帽章の色から作られた国旗は当初左から赤、白、青の順だったものが、1794年に改定され現在の青、白、赤の順になっているそうです。
*海賊の旗についてはこちらに図が色々あります。
**ちなみに式典で演奏されているのはRule Britanniaという、さしずめイギリス海軍賛歌といった曲だそうです。歌詞と音源がこちらにあります。(Thanks to マイソフさん)
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物語の進行上、重要な要素として登場するのが海賊の掟(Pirate's Code)。
エリザベスが海賊にパーレイを要求する際に、「海賊モーガンとバーソロミューが定めた"the code of the brethren"によれば」(According to the code of the brethren, set down by the pirates Morgan and Bartholomew)という言い方をしていますが、この辺りはフィクションのようですね。”海賊共通のコード、掟”というのはなく、元となっているのは、海賊が船に乗る際に、船長の下で誓約する条項(Articles)のようです。例えば、バーソロミュー・ロバーツ船長のもの(The Articles of Bartholomew Rober's Crew)は11条から成っていて、下記のような内容について書かれています。(要約です。原文はこちらで読めます。)
I. 物事を決める際には全員平等の投票権をもつ。
II. 分け前はリストに従って公平に。ごまかした者は孤島に置き去り、盗んだ者は鼻と耳をそがれる。
III. 金銭を賭けたゲームの禁止。
IV. 夜8時消灯。それ以降に酒を飲む場合は甲板に座って明かり無しで。
V. 武器は各々きちんと整備を。
VI. 少年・女人禁制。変装させて女性を航海に同行させた場合、その男は死刑。
VII. 戦闘時に船や持ち場を離れた者は死刑または孤島に置き去り。
VIII. 船の上での争いは禁止。ただし陸にあがってから、作法に従って剣またはピストルで勝負をつける。
IX. 戦闘による障害者には特別手当て。
X. 役割による略奪品の分配割合。
XI. 楽士の休日は安息日のみ。
各々の船によって条項は若干異なるものの、概ね似たような内容について定められていたようです。当時の階級社会では特異な概念である民主主義、平等という原則に加えて船で共同生活をするという観点から実際的な規律があげられています。
さて、映画のせりふに戻って、"the code of the brethren"というのは、17世紀半ば頃からカリブ海のバッカニア達が自らを"the bretheren of the coast"(沿岸の同胞たち)と名乗っていたことから作られた言葉かと思われます。(brethrenはbrotherの古い複数形で同志、同業者、信者仲間などの意味。)
ヘンリー・モーガンもバーソロミュー・ロバーツも実在の海賊ですが、時代的に両者は若干ずれています。
バッカニアの中でもっとも有名なヘンリー・モーガンは1635年ウールズ生まれで、年季奉公のためカリブ諸島に。1662年、英国から私掠船状を獲得し、スペイン領だったキューバのプエルト・デル・プリンシペを陥落し、その後パナマを占領。英国とスペインの和平が整うと冷遇されたが、ナイトに叙され、1674年ジャマイカの副総督となる。晩年は総督と対立し、1683年公職追放処分、1688年死亡。
一方、「ブラックバード」と呼ばれた海賊の王者バーソロミュー・ロバーツは、1682年南ウェールズ生まれ。奴隷船の航海士として航行中に海賊ハウエル・デイヴィスに捕らえられ、海賊に加わる。デイヴィスの死後、ロバーツは船長に選ばれ、輝かしい海賊歴を重ねる。1772年、英国海軍との戦闘中に死亡。
掟の話と逸れますが、ロバーツと言えば、ジャックが死の島の洞窟で、「外に英国海軍がいるから、まずやつらをやっつけろ」というシーンで、 ”Robert's your Uncle Fannie's your Aunt”というせりふがあります。(字幕では「朝飯前」と出るところです。)
これ、何かの成句だったらわたしにはお手上げなんですが、想像力を発揮するに、例えるなら、「ポアロおじさんとマープルおばさんの血を引くおまえたち」と言えば「名探偵の血が流れている」という含意のような、「大海賊の血をひくお前たちにはこんなの簡単だろ」みたいな感じかなあと思ったりするわけです。
そうすると、おそらくRobertはバーソロミュー・ロバーツと当たりがつくわけですが、Fannie は謎で、わたしが調べた範囲で唯一関連しそうなのが、ファニー・キャンベルという小説の主人公。マチュリン・マレイ・バロウ(Maturin Murray Ballou)の "Fanny Campbell, The Female Pirate Captain. A Tale of the Revolution"(『ファニー・キャンベルー女海賊船長』/1845)という小説があって、18世紀半ばを舞台にした、ニューイングランドの女性が海賊の船長になり、フィアンセをキューバの監獄から救い出すというお話で、19世紀半ばに結構はやったそうです。
というわけで「大海賊のロバートおじさんとファニーおばさん」という解釈は、いかがなものでしょうか。(全然違ってたらスミマセン。)
ー参考文献&サイトー
『図説 海賊大全』編者デイヴィッド・コーディングリ/東洋書林
『女海賊大全』ジョーン・スタンリー著/東洋書林 (p.257-259にファニー・キャンベルの話が詳しく載っています。)
モーガンやロバーツについては、いくらでもサイトがありますが、探しているうちに見つけた海賊総合サイトで、図がたくさんあって色々コンパクトにまとまっていたものの一つが、The Pirate's Realm(英語)。
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ジャック・スパロウ役もぶっちぎりのアクの強さですが、元々個性派俳優として名をはせているジョニー・デップ。過去の出演作品はどれをとっても外れがない代わりに、役柄、あるいは映画自体がとてもアクが強かったりするので、人によって向き不向きがあるかと思います。「ジョニーが出ていればもう何でもいい!」というぞっこんな方は、どうぞ果敢にアタックして下さい(笑)。しかしながら、『パイレーツ・オブ・カリビアン』をきっかけに興味をもった、ちょっと他の作品を観てみたい、という方にとっては、やみくもに手を出すのはなかなかの冒険ですので、ご参考まで、とても私的ですがおおざっぱな傾向を書いておきます。
作品を便宜上三つの区分にわけて、ジョニー・デップを主眼にコメントしてあります。(タイトルにリンクがはってあるのは、わたしが過去にサイトにあげた感想ですので、ご興味がある方だけ、どうぞ。)
I. 万人向け編:ナチュラル&スイート
「ジョニー・デップ(以下JD)ってちょっと変」というイメージをお持ちの方は、ぜひこの辺りの作品を観てほしいです。極々普通に「素敵〜(はーと)」と思えるお姿もふんだんに有ります。
『ギルバート・グレイプ』GILBERT GRAPE 1993
田舎町で障害児の弟アニー(レオナルド・ディカプリオ)に父の自殺以来過食症を病む母親と、家族の世話をしょいこんでいる好青年ギルバートの役。内面の葛藤が切ないですが、世界は破たんしていないですし、ラストは明るく晴れやか。
『耳に残るは君の歌声』THE MAN WHO CRIED 2000
ナチスの迫害を受け生き別れとなった父を探すことを支えに生きるクリスティーナの恋人役。ジプシーで、白い馬をつれてイベントやオペラに出演して糧を得ている。舞台のコスチューム姿は絵にかいたように素敵ですし、JDってこんなに切ない表情ができるんだーとびっくりするくらい普通の恋人役としてはまってます。
『ショコラ』CHOCOLAT 2000
映画としてはややファンタジーテイストですが、これ位ならそれほど違和感なく観ることができるのでは。JDは朴訥としたジプシーのリーダーで、主人公の恋人になる役ですが、個人的にはすごく好きですね。
『妹の恋人』BENNY & JOON 1993
映画としての格は落ちますが、JDファンは必見。神経症の女の子と読み書きもろくにできないけれどチャップリンとバスター・キートンが大好きな男の子の”A Boy Meets A Girl"な物語。たまにはこーいう甘甘な世界もいいものだし、JDってやっぱり演技上手いわ〜と思いますよ。
『ニック・オブ・タイム』NICK OF TIME 1996
JD演じる「平凡な男」(しかも堅気のスーツ姿!)というのも振り返ってみるとかなりめずらしい(^^;。テロリスト(クリストファー・ウォーケン)に子供を人質に取られて、市長の暗殺を強要される役ですね。割と普通のサスペンスもの。
II. リアル・ワールド編:クール&ビター
実話を元にした映画をはじめ、シビアな現実世界に目がいく映画、ビターテイストな映画を集めてみました。
『フェイク』FAKE 1997
FBIおとり捜査官ドニーの役で、マフィアの潜入捜査を行っているうちに、家庭は崩壊しかけ、何を守るべきかわからなくなり、深みにはまりこんでしまう。奥さんに向かって「自分は正義のヒーローだと思っていたけれど、今の俺はお前の言う通りただのヤクザだ。」というところのシーンが最高です。ドニーをかわいがる兄貴分で、落ち目のマフィアを演じるアル・パチーノがまた上手いんだわ。
『ブロウ』BLOW 2001
麻薬王ジョージ・ユングの半生、高校時代からスリリングでゴージャスな最盛期、そして娘に再会することを夢見て刑に服す初老の男までをパワフルに演じきっています。一生という時間軸を一緒に駆け抜けたかのように観終わってどっと疲れますが、ポスターから想像するよりずっと重みのあるいい映画です。
『ブレイブ』THE BRAVE 1997
JDが監督と主演をこなしています。
職もなく住んでいる土地一帯から立ち退きを迫られているネイティブ・インディアンのラファエル。仕事があると言われて行った先はスナッフ・ビデオの製作元。ラファエルは家族のために自分の命とひきかえに大金を得る。残された時間は一週間。
もうちょっとテンポをなんとかしてくれるといい映画だと思うんですけど。
『デッド・マン』DEAD MAN 1995
ジム・ジュームッシュウの白黒映画なので、はまる人にはとてもはまると思いますが、独特なリズム感で流れていて、メインのシーンは哲学的な感じがするので、人によっては退屈かもしれません。19世紀無法者地帯の西部に東部から来てトラブルに巻き込まれる会計士の役。時が止まっているようにすら感じられる映像がいいんですが。
III. ファンタジック&ホラー・ワールド編:クール&ユニーク&ディープ
若干カテゴリー分けに問題はありますが、 上記I、IIとは別の意味で、一癖も二癖もある映画のラインナップ。
『スリーピー・ホロウ』SLEEPY HOLLOW 1999
個人的にティム・バートンの映像自体がお気に入りなので、ついトップにもってきてしまいましたが、JDは18世紀末、ニューヨーク郊外の村で起きる首なし死体連続殺人事件の調査をするニューヨーク市警のイカポッド役。ちょっとおかしな探偵ぶりがおもしろいです。
『フロムヘル』FROM HELL 2001
フロックコート再びのJDですが、こちらは19世紀末のロンドンで切り裂きジャック事件を追うアバーライン警部役。事件が事件なので殺害シーンはやや陰惨としていますが、そこさえクリアーできれば、結構おすすめの映画です。
『ナインス・ゲート』THE NINTH GATE 1999
古い希少本が棚にずら〜という快感以外、個人的には映画としての価値をあまり見い出せないんですが、JDという観点からみれば、眼鏡で細みで神経質そう、でも行動は大胆な”本の探偵”ディーン・コルソ役の彼は一見の価値有り。
『シザー・ハンズ』SCISSOR HANDS 1990
言わずと知れたJDの代表作、だと思うんですが、実際観たことない人もいるのかなあ。両手がハサミの人造人間エドーワードの役。語り始めると長くなるので、とりあえずマストアイテムということで。
『エド・ウッド』ED WOOD 1994
実在の人物という意味では、カテゴリーIIに入れてもいいと思うのですが、なにせティム・バートン監督だし、B級どころかC級映画監督と言われたエド・ウッドの人となり&製作風景はかなりディープな域に達していると思うので(^^;。昔観たときには途中で眠くなってしまったんですが、最近観直したら、すごくおもしろかったです。JDがJDであることを感じさせない程、まったく違う立ち居振る舞い、しゃべり方、表情をしているところもおもしろいです。
『ドン・ファン』DON JUAN 1995
このセクシーJDにめろめろ、というファンの方は多いと思いますが、はっきり言って「かなり変」(笑)。えっ、これフランシス・コッポラ製作ですか? 自分を”愛の貴公子=ドン・ファン”と疑わない自殺志願の青年と彼の妄想にかぶれていく定年まじかの担当精神科医(マーロン・ブランド)の物語でっせ。
とか言ってますけど、最初の一歩を持ちこたえられれば、これ、映画として非常におもしろいです。「かなり変」なJDもマジになるところは本当にど迫力で、目から射抜き光線出てますから。
『ラスベガスをやっつけろ』FEAR AND LOATHING IN LASVEGAS 1998
テリー・ギリアムでJDだけど、とても物好きな人以外にはお薦めしません(^^;。レンタル屋でケースが空になっているのをみるたびに、「あー、借りてる人大丈夫かな・・・」って思います(笑)。監督違いの二作目を作るらしいんですが、うーん、よくわからん。
<番外>
カテゴリーに入りきらないものと、JDがちょっとしか出てこない映画。
『アリゾナ・ドリーム』ARIZONA DREAM 1993
JD自身はナチュラルでかわいいんですが、周りがアクが強い上に、突然お魚さんが宙を泳いでしまうようなフランス映画なので、やや心して観て下さい。
『GO GO LA!』1998
『デッド・マン』のポスターが動いたり、要所要所でちょっとずつ登場。
ポスターをみてヴィンセント・ギャロが主人公なのかと思っていたら、アメリカ人の女優と恋に落ちたイギリス人の青年が主人公で、ギャロは主人公がアメリカで出会った友人なのね。さぞかしアクが強い映画かと思っていたら、割と軽くて楽しいコメディでした。
『ビートニク』THE SOURCE 1999
ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズの3人の作家に焦点を当てて、ポップカルチャーの源流と言われる、50年代のカウンター・カルチャー、ビート・ムーブメントを追うドキュメンタリー。JDはジャック・ケルアックの『路上』の一節を暗唱するんですが、彼自身ケルアックには思い入れがあるということで、言葉のリズムと彼のパフォーマンスの両者が相乗しあって、とても印象的。
『夜になる前に』BEFORE NIGHT FALLS 2000
個人的にすごくいい映画だと思います。一人二役のJDはちょっと他ではお目にかかれない姿かもしれず・・・。
なんだかんだと、ずいぶん書いてしまいましたが、あんまり参考にはならないかもしれませんね。とりあえず自分が興味をもった作品から観て行くのが一番で、ディープそうな作品は軽めのコメディと抱き合わせで観る予定を立てるのが、転ばぬ先の用心ではあります。そうそう、一作だけ、JD主演にも関わらずわたしが観ていない映画があります。『ノイズ』です。劇場で予告編みて、「うわー、これ夢に出てきそう」と思って以来、今だに観る気になれません(^^;。
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意外と一回観ただけだと(普通は一度しか観ませんね(^^;)、記憶があいまいらしい金貨の呪いについて、ちょっとまとめておきます。
呪いについて語られるのは、バルボッサがディナーの席でエリザベスに金貨の由来を話すシーン。882枚の金貨は征服者コルテスに殺りくを止めるように届けられたものだが、コルテスはどん欲で殺りくをやめなかったため、アステカの神が金貨に呪いをかけた。その呪いは石櫃から金貨を持ち出した者は永遠に罰を受ける、というもので、呪いを終わらせるには、全ての金貨を元に戻し、血であがなわなければならない。(All the scattered pieces of the Aztec gold must be restored and the blood repaid.) と、いうわけです。
エリザベスを死の島の洞窟に連れて行って呪いを解く儀式を行なう際に、バルボッサが海賊を前にする演説では、エリザベスがもっている金貨をのぞいて、ばらばらになっていた金貨は全て櫃に戻され、海賊全員がアステカの神にあがなう血の犠牲を払い、まだ、あがなっていないのはエリザベスの血(ブーツストラップ・ビルの子供だと間違われている)だけだ、とのこと。
ブーツストラップ・ビルの血をひくのはウィルだったため、最後に彼が自分の血をかけてお父さんの金貨を戻すと、めでたく呪いが解かれるわけですが、ややこしいのは、途中で、ジャックが一枚金貨を盗んでしまうからですね。バルボッサに「(ウィルを殺して呪を解くより)先に英国海軍をやっつけよう」と説得しながら、どさくさにまぎれて一枚くすねてしまうため、彼の金貨も戻さないといけません。不死身のバルボッサと戦うには便利ですが、それこそ永遠に戦っているわけにもいかないので、自分の剣で金貨をにぎる左手の平をさくっと切って金貨に血をかけてから、石櫃の所に戻ってきたウィルに向かってトスします。ウィルは、ジャックの金貨を戻してから、ナイフで手の平に傷をつけ、自分が首にかけていた父の金貨に血をかけて櫃に戻すと、呪い解除が完結。(実際映像で映るのはウィルが握った左手を開くと、手の平に傷があって鎖付きの金貨が櫃に落ちる、という一連の動作。鎖がついているのでジャックの金貨ではありません。ウィルは儀式のために金貨を首に下げさせられていたのが幸いでした。)そしてご承知の通り、生身の身体に戻ったバルボッサはジャックに撃たれた傷によって死んでしまいます。
金貨一枚一枚にレッテルがはられていて、各々その金貨を持ち出した人間の血をかけないと有効ではない、という程、厳しい仕組みかどうかはわかりません。息子の血でもOKな神さまなので、「全部の金貨が揃う」&「持ち出した人間(またはその血をひく者)全員の血が捧げられる」という条件が満たされれば、いいような気がしますが(^^;。
ただし、金貨を取ったり、戻したり、取ったり、戻したり、という繰り返しが許されるとなると、呪いとしてはあまりにお粗末かなあと思います。再び金貨を持ち出してしまった、お猿のジャックの運命はいかに?
(Thanks to BBS御参加のみなさま。)
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"Either Madness or Brilliance"(狂気の沙汰か才気の沙汰か)
ジャックとウィルが小舟を逆さにかついで海を歩くシーンで、ウィルが言うせりふですが、このフレーズが一番当てはまるのはひそかにブーツストラップ・ビル=ウィルパパなのではないかと思っています(笑)。
バルボッサのやり口が気に入らなくて、こっそり呪いの金貨を息子に送ったあげく、海に沈められてしまう人生。。。
金貨を息子に送った時点で、呪いを解くには全部の金貨が必要、ということはわかっていたから隠したのだとは思いますが、隠し場所がばれた時には息子を危険にさらしかねないわけですよね。息子の居場所はわからないだろう、という方に賭けたのだとは思いますが、名前が同じという手がかりを残すのはずいぶんリスクが大きいような。
自分の命も息子の命も危険にさらすほどの確執って何やねん? という一番おいしいところは各々勝手に想像していただくとして(笑)、ここでは、映画からわかること、わからないことを書いてみます。
まず、10年前のブラックパール号の動きを時系列に並べてみます。
a)ジャック、死の島の宝探しのためのクルーを集めにトルトゥーガに現れる。
b)ブラックパール号出航。3日後、反乱が起こり、ジャックは無人島に置き去り。
c)バルボッサ船長とブラックパール号のクルーは死の島で呪われた金貨を見つける。全員(含むブーツストラップ・ビル)が金貨を手にする。
d)金貨で豪遊するが、呪いに気付く。呪いを解く方法を探す。
e)ブーツストラップ・ビル、こっそり金貨を息子に送る。
f)それがばれてブーツストラップ・ビルは海にしずめられる。
g)呪いを解くには持ち出した者全員の血が必要ということがわかる。
まず、疑問なのは、ブラックパール号の反乱の時、ブーツストラップ・ビルは何をしていたのか? 後からそこまで逆らうなら、実行段階から賛成していないでしょうし、その時点であまり過激に反応をしていると、その後の金貨の分け前にはあずかれなかった気がします。多勢に無勢で逆らえなかった、というのが一般的な落としどころかなあとは思いますが、ピンテル(義眼の海賊の相棒)がウィルに話しているせりふでは、"Never sat well with Bootstrap what we did to Jack Sparrow, the mutiny and all. "(我々がジャック・スパロウに対して行ったこと、反乱、すべてがブーツストラップには気に入らなかった。)となっているだけなので、没脚本の「ブーツストラップは反乱後にブラックパール号に加わった」という設定も、あながち否定はできないかも、と大いなる期待をもっているわけです。
ジャックはブーツストラップ・ビルについて、ウィリアム・ターナーという本名を知っている奴は少ない、と言っているので、二人はブラックパール号でクルーを集める前から知己がある、と考えてもおかしくはないので、ビルが最初からブラックパール号に乗っていなくても問題はありません。
さて、次に最大の疑問として残るのは、ブーツストラップ・ビルは本当に死んでいるのか? ですね。
ピンテルの話では、ブーツストラップ・ビルが金貨を送ったことがわかると、バルボッサはブーツストラップ・ビルのブーツストラップに大砲をくくりつけた。("what the Captain did, he strapped a cannon to Bootstraps' bootstraps.")最後にビル・ターナーをみたのは、海の底(の忘却の彼方へと)に沈んでいく姿だった。("The last we saw of ol' Bill Turner , he was sinking to the crushing black oblivion of Davy Jones' Locker.")となっています。*
最初は、大砲の発射口にブーツストラップ・ビルをくくりつけて大砲を撃ったのかと思ったのですが、大砲ごと一緒に沈めたという解釈も可能なようです。確かにこの時点で不死身の呪いを自覚していれば、普通の方法で殺しても駄目なわけで、二度と戻ってこれないような深みに沈めてしまえ、という考え方も成り立つわけですね。水圧でぺしゃんこになっても生きていられるのかどうかはよくわかりませんが(^^;。沈めるのなら、そんじょそこらの海ではなくて、例えばプエルトルコ海溝とか、まあよくわからないけど生きて戻ることは不可能と思われる場所に沈めてしまったのではないかと。その時点では金貨さえ全て揃えば呪いは解けると信じられていたのだと思いますが、後から「奴の血が必要だ!」とわかっても簡単に探し出せるような場所ではなかったのではと。
余談ですが、エリザベスの血では効果がない、とわかった時に、海賊の手下達がバルボッサに対する不信をぶつける場面がありますが、あの時も海賊の一人がバルボッサに向かって言っているのは「お前がブーツストラップを海の底に送ってしまったんだ。("It was you who sent Bootstrap to the depths!")」で、「殺した」という表現はしていないのですよね。
その後のブーツストラップ・ビルの運命としては、仮に生きていたとしても、海の底にいる限りは呪いが解けた時点でお陀仏。(それって、実の息子に殺されたも同然? ウィル、その可能性に気付いたら卒倒すると思います(^^;。) 個人的には、鯨に飲み込まれたとか海底火山の爆発のおかげで浮上したとか、まあそんなこんなで(理屈は何でもいい)、実は生きていた、って説を押したいのですが(笑)。パート2で復活! というのはあまりに定石過ぎるかしらん(^^;;。
*Davy Jones' Locker
1751年Tobias Smolletの"The Adventures of Peregrine Pickle "での初出が確認されている言葉のようですが、それ以前から船員の間で使われていたのかもしれません。Davy Jonesは海の悪魔で、Davy Jones' Locker(またはDavy's Locker)で「海の底」の意味。語源は諸説さまざま。(ご参考まで。)当然、海の底での死、海の墓場も含意しており、例えば、"To send someone to Davy Jones "と使えば、海に沈めて殺すことを意味していることは容易に想像がつきますね。
ということは踏まえた上で、万に一つもウィルパパを生かしたい、というのが、ここでの意図ですので、あしからず(^^;。
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早くも12/12にDVD発売予定ですが、解説がほしいシーン、繰り返して聞きたいシーン、DVDでコマ送りしたいシーンをピックアップしてみました。
○シンガポール
"Clearly, you've never been to Singapore." (確かにお前はシンガポールに行ったことがないだろうよ。)
ジャックがエリザベスのコルセットをナイフで切り裂いてはずしたところで、英国海軍兵のムルロイが「そんなことは思いつきもしなかった」と言うのに対して、ジャックが応えるせりふですが、字幕では「海軍では教えないだろうがね」と出るところ。
シンガポールはマレー半島の先端にある島で、現在では独立国ですが、歴史を振り返ると、1819年にイギリス東インド会社から派遣されたスタンフォード・ラッフルズが英国の貿易拠点としてシンガポールを設立。それ以前は小さな漁村だったようです。権力支配が行き届いていない所は海賊が目立たず船の修理等をするには立ち寄りやすい場所だったとも思われますが、コルセットと関連するようなソサイアティが果たして成立していたのか・・・?
どちらかというと地名というより、トルトゥーガの娼館の名前とかそーいう類いの言及だったのかなあとも思ったのですが・・・。求む!>コメンタリー。
○「フランス人に言え」
オールで殴られたジャックがふらふら海賊の前に現れて「パーレイ」という言葉を思い出せなくてぶつぶつつぶやいていると、海賊の一人ラゲッティがつい「パーレイ?」と言ってしまい、ジャックは「それだ、それ!」と「パーレイ」を要求します。ラゲッティの相棒ピンテルが「パーレイを思い付いた奴なんてくたばっちまえ!」と言った言葉に対してジャックが応えるせりふですが、ここがどーしても聞き取れなくて。聞き取りスクリプトでは"That would be French."(それ(パーレイを思い付いた奴)はフランス人だろう。)になっていて、意味的にこれでOKなんですが、最後のFrenchしか聞き取れないのがかなしい(^^;。
○何に謝ってるの?
洞窟でバルボッサと死闘を繰り広げるジャックですが、バルボッサに追い掛けられながら、途中で"Sorry!"と叫ぶところがあります。通路(?)の脇においてあった金の燭台か置き物かなにかを倒した感じですが、何せ展開が早くてよくわかりません。
○バルボッサの死体の後ろにいるのは?
クレジットの後のシーンで、石櫃の側に画面手前に大きく仰向けになっているのはバルボッサの死体ですが、その後ろにもう一体横たわっているように見えます。ウィルが相手をしていた3人の他にあそこで死んでいるべき海賊っていましたっけ?
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某テレビ番組ですっかり有名になった「トリヴィア」ですが、映画情報サイトとして有名なIMDb内にこの映画のトリヴィアページもありました。こちらです。
個人的におもしろかったものをコメント付きであげておきます。
○ウィルがジャックの真似をするシーンはオーリイ考案で、ブラッカイマーに入れてくれと言ったらしい。(やっぱりね〜。)
○ボートを被って歩くシーンは、"The Crimson Pirate(1952)(真紅の盗賊)"へのオマージュ。
○ジャックが海軍兵のムルロイとマートッグに向かって言うせりふ「...and then they made me their chief(それからやつらは俺を隊長にして・・・)」は、デップがフアンで出演もしたイギリスのコメディシリーズ"The Fast Show(1994)"へのトリビュート。
○スパロウのタトゥーは本物。(また彫ったんだ(^^;。)でもって、服と身体につけたよごれで元からあるたくさんのタトゥーを隠したらしい。(確かに左手の親指と人さし指の間の付け根がちゃんと汚れている(笑)。)
○オーリイも右手首のタトゥー(LOTRの時に旅の仲間みんなで入れたという奴ですね(^^;)を服や布で隠している。
○ポートロイヤルを襲ったブラックパール号の最後の砲弾の煙が空にもくもくとあがるが、ミッキーマウスの頭の形をしている。(これ微妙に不自然なんだわ(笑)。)
○ブラックパール号の海賊旗は「キャリコ・ジャック」と呼ばれた実在の海賊ジョン・ラカムが使っていたデザイン。
○砦はセント・ヴィンセントに実在の女性用監獄だそうな。(へー、へー、へー!)
○道で気を失っていたウィルが目覚めて港を見渡す時に、ドアの前をほうきではいているのが少女時代のエリザベス役の子らしい。(全然気が付かなかったわ。)
この他にディズニーランドのアトラクションとの関連も載っています。
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映画評でオーランド・ブルームに対する褒め言葉でよく使われていたのが「往年のエロール・フリンを彷佛させる」というフレーズですが、「エロール・フリンって誰?」という方も多かったのではと。(かくいうわたくしめもその一人ですが(^^;。)1930年代後半から50年代にかけてハリウッド映画(とりわけ時代活劇)で活躍した美男アクション・スターなんですね。代表作は『海賊ブラッド』(1935)、『放浪の王子(王子と乞食)』(1937)、『ロビン・フッドの冒険』(1938)、『シー・ホーク』(1940)、西部劇では『カンサス騎兵隊』(1940)(ドナルド・リーガンと共演)、『壮烈第七騎兵隊』(1941)など。
とりあえず、興味のある海賊もの『海賊ブラッド』と『シー・ホーク』を見てみましたが、お〜、確かにかっこえ〜。なんつーか、昔の加藤剛みたいで(古い?)、エラがはってて誠実&信念一徹な感じで、品のある甘いマスク。実物大のエロール・フリンはスキャンダルたくさんな方だったようですが(^^;。オーランドはじめスレンダーな今風俳優を見なれた目にはとてもがっしりして見えますが、マッチョな感じではないので適度に男らしいという雰囲気。
『海賊ブラッド』は17世紀後半、ジェームズ2世時代の英国から物語が始まります。エロール・フリン演じるピーター・ブラッドは元戦士で今は医者。新教徒の怪我人を治療したことで、反逆の罪を問われ、英国の植民地ポートロイヤル(!)に奴隷として送られる。医者としての技量と機知とによって通風持ちの総督に気に入られたブラッドは、スペイン海軍の攻撃に乗じて、奴隷となっている仲間を逃がし、スペイン船を乗っ取って、海賊となる。ロマンス有り、冒険有り、と物語としてもなかなかおもしろいと思いますが、エロール・フリンの見どころは「奴隷市場で憤まんやるかたない怒りの表情」と勝手に決めさせてもらいました(笑)。ただ笑ってるだけの美男子じゃいけません。オーリイも、エリザベスを海賊にさらわれて、ノリントンが対応策を練っているところで、"That's not good enough!(それじゃ間に合わない!)"と爆発したところはなかなかグーでしたが、激情表現だけではなく、尊厳さを失わない静かな怒りの表情も身に付けていただくと、さらに磨きがかかるのではと。
『シー・ホーク』は16世紀後半、エリザベス一世の時代のお話。私掠船「シー・ホーク」号のジェフリー・ソープ船長をエロール・フリンが演じています。非公式な英国海軍の役割を果たしている私掠船団に対し、圧倒的な海軍力を誇るスペインからの圧力が増す中、「シー・ホーク」号は秘密裏にスペイン船を襲うためにパナマに向けて出航する。しかし、情報はスペイン側に漏れており、逆に待ち伏せをくらったシー・ホーク号はキャプテン、クルー共にスペイン船の奴隷となってしまう。血路を開き、英国に帰国したソープはウルフィンガム一味を倒し、スペイン王の陰謀をあばく。ラストで女王が船上でソープに爵位を授けるところは、もろフランシス・ドレークですな(^^;。こちらもロマンス有り、冒険有りでなかなか楽しめます。(悪の帝国スペインに対抗する良い国イギリス、という描き方が多少鼻につくところではありますが。)こちらの作品の見どころは、スピード感あふれる、ソープ船長がウルフィンガムら4人と火花を散らすチャンバラシーンでしょう。あと、めちゃかわいいおサルさんがでてきます(^^)。
他の海賊映画はあまりよく知らないんですが、POTC以外で何か見てみたい、という人には、有名な古典を押さえておくという意味でも、この2作はおすすめと思います。
英語サイトですが、エロール・フリンのファンサイトに写真がたくさんあります。内、『海賊ブラッド』(Captain Blood)、『シー・ホーク』(The Sea Hawk)等。
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キャスト一覧(フルクレジットはこちら)を見ていて、「おお、こーいう名前がついているのか〜」とあらためて思ったもので、端役の名前をまとめておきます。
1.バルボッサの手下
○Bo'sun ・・・バルボッサの右腕と思われる黒人の海賊。"You will speak when spoken to.(話し掛けられるたときだけ口をきけ)"と言ってエリザベスを叩きましたね。
<エリザベス拉致&女装担当コンビ>
にくめないキャラよね(^^;。
○Pintel・・・頭がはげている方。
○Ragetti・・・義眼の方。
<武器庫担当コンビ>
○Koehler・・・牢にいるジャックを見つけて、首を締め上げて"You know nothing of hell. (地獄のことなぞ何もしらないくせに)"と毒図いたレゲエ風の方。
○Twigg ・・・顔が細くて、あごが髭で覆われている方。
<ウィルと戦う海賊>
○Grapple ・・・ポートロイヤル襲撃時に、ウィルに "Say goodbye!(あばよ)"と言ったら、看板が落ちてきて窓ガラスに叩き付けられて、ウィルから逆に"Say goodbye!"と言い返された海賊。
○Jacoby ・・・赤いトルコ風?の帽子を被って長いあご髭をはやしている。死の島の洞窟で "I'm gonna teach you the meaning of pain! (苦痛の意味を教えてやるぜ)"とウィルに言ったら、エリザベスにやられてしまった海賊。ポートロイヤル襲撃時に手りゅう弾をもって女性を追いかけ廻していて、ウィルに斧を投げ付けられた海賊と同じ?
○Mallot・・・死の島の洞窟でエリザベスの血では効果がないことがわかった時に、バルボッサに"It was you who sent Bootstrap to the depths!(おまえがブーツストラップを海に沈めてしまった)"と不満を言う海賊ではないかと。
その他、誰が誰やらわかりませんが、Weatherby、Ketchum、Maximo、Monk、Dog Ear、Clubba、Scarus、Simbakka、Hawksmoor、Katracho、Scratch、Nipperkin。
2. ジャックのクルー
GibbsとCottonの説明はいらないでしょう。
○Marty ・・・背が極端に小さい丸坊主の海賊。ギブスの酒の小瓶を大砲につめちゃうところが好き〜。
その他、Moises、Kursa、Matelot、Tearlach、Duncan、Ladbroc、Crimp、Quartetto。
3. 英国海軍
Lt. Gillette(ジレット中尉)は目立っているのでわかりやすいと思いますが。
<天然コンビ>
どっちがどっちの名前だったかわからなくなるのよね(^^;。
○Mullroy (お目めがグーフィみたいというかブルートみたいというか)若干太めで強面ツッコミ担当。(→"What's your purpose in Port Royal, Mr. Smith?"「ポートロイヤルに何の用だ? ミスター・スミス」)
○Murtogg 素直でだまされやすそうですが、時にその方が真実に近付くわけですね。(→洞窟の前で海賊を待ち伏せしている時に"...what Mr. Sparrow said we should do. With the cannons and all."「ミスタースパロウは大砲を撃て、と言ったのでは?」)
4. その他
○Estrella・・・総督邸のメイド?
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"PIRATES OF THE CARIBBEAN -THE CURSE OF THE BLACK PEARL-" The Junior Novelization, Adapted by Irene Trimble, Based on the screenplay by Ted Elliott & Terry Rossio and Jay Wolpert, Random House New York
英語版のノベライゼーションは子供向けの物しかでていないのですが、長らくamazonで品切れだったものがやっと手に入りました。英語が簡単でサクサク読めるのがうれしいですね(^^;。当然中身もはしょってありますが。それでも多少の突っ込み所はあるもので、以下気付いた点をあげておきます。
○トルトゥーガの酒場
ギブスを見つけた酒場の名前は"Faithful Bride(忠実な花嫁)"。ウィルが看板を見上げると、ブーケをもった花嫁の絵柄で、その花嫁は手錠をはめられている、とう描写があります。映画の中でその看板が映っているかチェックしたいところです。
○アナマリア
クルーを集めた波止場でのシーンの最後で、ジャックがアナマリアを"First Mate"に任命しています。ちなみにギブスがQuatermaster。(酒場のシーンで、ジャックがウィルに「ここで我らのQuatermasterが見つかるはずだ。」と言っています。)
○ジャックの過去
地図制作者(cartographer)の助手だった、と聞いたことがある、とギブスが言っています。
○ブラックパール号から追い落とされる二人
ジャックが先、後からエリザベス、になってます。ジャックは後ろ手で縛られているので、エリザベスが海の中で解いてやります。海底のピストルを確保したジャックは、サメがいるのを見つけて、海面に浮かびあがろうとするエリザベスを引きずりおろし、海底に沿って島に向かいます。
○孤島で
日本語のノベルズでも出てくるシーンですが、ジャックが「ここで一か月くらいなら暮らせる」と言うのに対し、エリザベスが「そんなことしている間にウィルが死んじゃう、今何かしなくちゃ。」とヒスを起こします。ジャックは「確かにそうだ。」と答えてから、ラムのビンを掲げて「ウィル・ターナーに幸運を!(Here's luck to you, Will Tuner!)」と言います。このジャックの人を食ったような行為とセリフは、らしくていいなーと思うんですけど。
○バルボッサ
洞窟で、海賊たちが海軍と戦うために出払ったあと、ジャックのバルボッサへの裏切りが発覚したところで、"I was almost liking you.(お前を気に入りはじめていたのに)"とのセリフがあります。その後戦いが煮詰まったところで、バルボッサはジャックに斬り付けてからエリザベスとの距離をつめて、彼女ののど元に剣を突き付けます。ジャックに対して「手下が戻ってきたら、お前の身体でブラックパール号の飾りをつくってやる」などと物騒なことを言ったりしています。
○ジャックの金貨
ウィルには投げず、ジャックの金貨なしで、バルボッサたちの呪いは解けています。バルボッサが死んだ後、ジャックは、自分の金貨に血をかけて返します。(返す前に「不死のキャプテン・ジャック・スパロウか・・・」とやや名残り惜し気につぶやいたりしてますが(^^;。)
○映画の画像
まん中に8ページの写真が挿入されていて、短いコメントがついています。
ージャックの形容詞で”swashbuckler”という単語が使われていますね。辞書をひくと、 "A flamboyant swordsman or adventurer"と出てきて、性格や行動などが派手で、自信に満ちて大胆で、異彩を放つ剣士、というような感じでしょうか。
ーよく雑誌等で使われているもので、甲板でジャックがウィルの肩に手をかけて二人が並んでいる写真には、「バルボッサと手下から逃れて、ウィルとジャックは再度ブラックパール号を掌握する」というコメントが入っているんですが、そもそもこのシーンは映画では出てこないはずで、シチエーションとして可能なのはインターセプター号の上。しかも、ブラックパール号を取り戻したいのはジャックで、ウィルにとっては船よりエリザベスなわけで。。。ってそこまで厳密に画像とコメントがリンクしているわけではないのでしょうが(^^;。
ー最後の写真(エリザベスとウィルのキスシーン)のコメントで爆笑してしまったんですが、"Elizabeth and Will finally kiss...and they live happily ever after" その後お姫さまと王子さまは幸せに暮らしましたとさ、って常套句は、どー考えてもあの二人には似合いそうにないんですけど(笑)。それに、平穏無事だと続編作れないですしね(^^;。
というわけで、これ日本語だったら絶対買わないよなーと思いますが、まあストレスなく楽しめる英語で(はしょってはあるもののよくまとまっていますし)、500円ちょっとならそれほど悪くないかな。
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